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突然の君の訪問


迎えに来たってどういう事ですか?

見知らぬ美女に声が少し裏返しになったが、なんとか耐えた。突然、目の前に現れるとは何事か。新手の詐欺か、きっとそうだ。こんな美女に知り合う機会はほぼない生活なんだから。それにここは地上50階だし、このひと月外出していない。誰とも顔を合わせていない。こえが裏返しになったのもそのせいだ。
無精髭にモサモサの髪でヨロヨロの部屋着を着た俺。

いつまで待っても来ないからです。
イラッとしたらしい。声にトゲを感じる。
早く回収しないと私のノルマが達成しません。
さぁ、早く一緒に来て。

何を?ノルマって関係ないだろう。俺。それになんで一緒に行かないといけないんだ?知らないよ。

顔がきれいな分怒ると迫力があるって本当だな。
赤を通り越して青くなった顔は気の毒に思う。
さて、まずは不法侵入で通報して…ん?あれ、身体が透けているのは気のせいか?

あなたのような自覚のない方が増えているから。
呆れたように言い、俺の手首をガッチリ掴む。

フワリと浮かび上がるとベッドの上に青黒い顔をした俺がいる。なんかヤバそう。

先日の停電でエアコンが切れて、室内温度が調整できなくて、寝ている間に身体から離れたんですよ。意味わかりますか?

そう言って耳を塞ぐ準備をしている。一拍置いて、ジンワリと自覚し、そして叫ぶ俺を仕方無さそうにみている。
行きますよ。まだ地に縛られずに済みそうです。
手首をつかまれ、分厚いガラス窓を抜ける。
地上にはパトカーも見える。

そうか。もう、ここにはいられないんだな。
救いか。随分横柄だがな。分相応か。

8/29/2024, 9:10:55 AM