窓越しにみえるのは
たった一枚の分厚いガラス窓の向こうは憧れの世界だ。
緑の草原、まっすぐ伸びるポプラ並木、あの先には何があるのだろうか?。
両手をベタってくっつけて顔も近づけて窓越しの世界を見つめているのはほぼ日課になっている。
巡回している警備隊員が横目で視認して通り過ぎて行く。ここで会う事ができるのは警備隊員だけだ。
何故か分からないが。詰所が近くにあるはずなのだが、いつも不意な現れて、何も言わずに規則正しく歩いて行く。武器の類いは持っていない。ここにどのくらいいるのかわからない。罪人なのだろうか?何の?
窓越しにみる景色を見ながらそう思うようになった。
激しい揺れだ。聞き慣れない警報が鳴り響く。
自由だった部屋の出入りが制限された。部屋に閉じ込められた。部屋な窓は小さくて曇っているから外は見えないから好きではない。腹に響く振動がしたのち少しすると揺れはなくなり静かぬなった。
窓が明るい。曇りがとれている。顔よりも小さな窓に顔をくっつける。砂漠?いつも見ていた景色とは違うが、
生々しい感じがする。
換気口から異臭がする。
退避を促す警報が鳴り響き、部屋のロックが外れた。
部屋から出ていつもの場所にまっすぐに行く。
砂嵐のような模様になり、バチバチと稲光までしている。偽物だったのか。そうだ、思い出した。
戦争の後地上には生物は住めなくなって空に逃げたんだ。コールドスリーブで、
制御室へ行くと誰もいなかった。正確には目覚めなかった人達を確認する。随分、前に耐用年数が過ぎていたらしい。警備隊員が倒れている。ロボットだ。
もう燃料切れらしく、真っ暗だ。息が苦しい。
窓はないか?無理矢理ドアを開けて窓を探す。
窓越しにみえるものは希望か絶望か?
どちらでもいい。生きていると教えて欲しい。
赤い糸
天から地獄へ降ろされた糸は罪を犯しながらも、たった一度、小さな蜘蛛を踏み潰さずに見逃した事によるものだった。でも、後から登ってきた罪人に憐れみをかけなかった為に手元からブツリと切れてまた果てしない罪への呵責を受ける事になった。
運命の赤い糸というのは近いものかあるのではないか?
我欲にまみれれば糸は手繰れない。いや、手繰り寄せた糸の先にあるものを自己都合で放棄したり、無理矢理他の人へ回したりする。違う!これは私の理想ではない。
まったく自分の現状を理解していないか、とてつもなく高い理想と意志があるのか。
どうしても関わらなくてはいけない時は何度拒絶してもやってくる。これは?次へのステップと思うべきか?
それを赤い糸と認めた時はもれなく試練つきか?
待てよ。赤い糸ってそういうオプションつき?
きっついオプション選んだら生まれ変わらなくてもいいとかあるのか?自覚しないように生まれる時にしているとしたら、正しく生きているのかわからなくなる。
神様の視点は違う。荒療治されないとわからないなら
まとめてドンとくる。
この場合は人類の集合意識が引いた赤い糸の結果で
綿密に組まれた計画の一環かもしれない。
その中で個人が赤い糸引くって複雑。
もう理解できる範囲じゃない。
ここではないどこか
① やらかした時に行きたくなる都合の良い場所
②やらかした奴を送りたいお仕置き場所
③自分ではどうにも出来ない時に行きたくなる場所
④自分の都合で想像される場所
⑤本当はどういう場所かわからない場所
⑥誰かに無理矢理送り込まれる場所
そうカードを見せながら言われたらどうするか?
目の前を歩く人々を見る。
今日の狩場は選び放題だな。努力もしない奴らに必死に生活している奴ら
希望通りにしてあげるんだから、楽しめないとな。
最後の魂の味が違うんだよな。
さてと誰とここではないどこかを味わうかな。
君と最後に会った日
また会えて良かった。次はいつ会えるかしら?
君は小首を傾げて僕を潤んだ瞳から溢れそうになるのを一生懸命堪えている。
初めて会った時から変わらないね。
スベスベツヤツヤだった黒髪が白髪に変わっても、笑い皺が増えてもきれいだし、かわいい。
泣かないで。僕はヨロヨロでもう自分では動けないから、君の涙は拭ってあげられないよ。
でも、次、生まれ変わっても君を見つけるよ。
約束だよ。また会えて嬉しいって言おうね。
この人生で君と最後に会った日は僕の命が尽きる日。
けんか別れしてなくて良かった。ありがとう。
僕の大切な君。まだこちらへ来なくていいからね。
またこの世で会いたいから。
繊細な花
毎日毎日、温度、陽当たり、湿度、風向き、栄養状態を確認している。この花はそれだけ手間をかけても枯れてしまう。何が足りないのか?愛情が足りないんだよ。
と、助言をもらう。そうか。固い蕾のままの花鉢を見る。愛情ってそれがなければ毎日の世話はできないのでは?腕組みして唸ってしまった。
彼女が遊びに来た。花鉢を見てからチラリとこちらを見る。そして、不服げに頬をふくらませる。
花鉢の側にある記録帳を見る。
事務的ね。これじゃ咲けないわ。
こちらを見て、ビシっと指を突きつける。
世話をしながら無表情、言葉のひとつもかけない、様子がおかしいって思うと根掘り葉掘り調べる、それも無神経にあちらこちら突っついて!
え?何を言っているんだろうか。心配だからだろう。
一言、言って欲しいだけよ。かわいいね、とか、今日はどうしたいって。
花に?そうか。ありがとう。君はかわいいのは当然だから言わなくてもいいよね?予定も決められるし、
そうか、話しかければいいのか。難しいなぁ。
感心して納得していたら、頬に強烈な平手打ちを食らった。そして彼女は潤んだ瞳のまま帰ってしまった。
何を間違えたのだろうか?
分からない。あっ、水やりしないと。繊細な花には世話が必要だからね。話しかけも足してみようか。
あぁ、彼女なんであんなだったんだろう。調べないと。