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繊細な花


毎日毎日、温度、陽当たり、湿度、風向き、栄養状態を確認している。この花はそれだけ手間をかけても枯れてしまう。何が足りないのか?愛情が足りないんだよ。
と、助言をもらう。そうか。固い蕾のままの花鉢を見る。愛情ってそれがなければ毎日の世話はできないのでは?腕組みして唸ってしまった。

彼女が遊びに来た。花鉢を見てからチラリとこちらを見る。そして、不服げに頬をふくらませる。
花鉢の側にある記録帳を見る。

事務的ね。これじゃ咲けないわ。
こちらを見て、ビシっと指を突きつける。 
世話をしながら無表情、言葉のひとつもかけない、様子がおかしいって思うと根掘り葉掘り調べる、それも無神経にあちらこちら突っついて!

え?何を言っているんだろうか。心配だからだろう。 

一言、言って欲しいだけよ。かわいいね、とか、今日はどうしたいって。

花に?そうか。ありがとう。君はかわいいのは当然だから言わなくてもいいよね?予定も決められるし、
そうか、話しかければいいのか。難しいなぁ。
感心して納得していたら、頬に強烈な平手打ちを食らった。そして彼女は潤んだ瞳のまま帰ってしまった。
何を間違えたのだろうか?
分からない。あっ、水やりしないと。繊細な花には世話が必要だからね。話しかけも足してみようか。

あぁ、彼女なんであんなだったんだろう。調べないと。

6/25/2024, 9:51:12 PM