『キラキラ』
今日も激務だった。
仕事から家に帰り、寝室に入ると
猫がベッドのまくらのど真ん中で
気持ち良さそうに寝ていた。
当然だが、おかえりの挨拶はない。
『いい身分だね』と皮肉を言ってみたが
全く反応はない。
お腹がすいていたので、軽く夕食を取ろうと準備をする。
すると、あれほど反応がなかった猫が
ニョキっと立ち上がり
ご飯をくれとすりよってきた。
この時だけは一丁前に甘えてくる。
『俺はまだご飯食べてねえんだよ』
と言いつつも、先に猫のご飯を作る。
ようやく夕食を食べれるかと思ったら
今度はお尻をポンポンしろと催促してきた。
『猫だから許されるんだからな。ヒゲ面でわがままで、無愛想で、甘えん坊の中年なんか。』とブツクサと言いながらもお尻をポンポンと叩く。
頭も撫でて欲しいのか、顔を向けて俺を見つめてきた。
瞳がキラキラして綺麗だった。
金色の瞳、不純物が全くない。
湧き水に砂金の粒を散りばめたような瞳。
この瞳を見ていると、自分も他人も世界も
全て綺麗なものに見えてくる。
『明日も頑張ろう』
『不完全な僕』
完全であれば、それ以上は無い。
そこに創造の余地は無く、それは知恵も才能も愛も
立ち入る隙がないことを意味する。
不完全に人は希望を見出して、愛を育み
足りない部分を補うべく進歩するのだ。
完全とは絶望である。
過去に存在した何物よりも素晴らしくあれ。
しかし、決して完全であってはならない。
不完全な世界で良かった。
不完全な僕で良かった。
『言葉はいらない。ただ…』
俺たち二人は親友だった。
奴と出会ってかれこれ十年になるだろうか。
この十年という期間、関係性を維持していくのに不可欠であったことが一つだけある。
それは、どちらかが負けを認めるまで徹底的に殴り合うこと。
互いに対して溜まった鬱憤を、拳でぶつけ合うのだ。
他の人間には理解できないだろうが、俺たち二人にとっては、言葉より拳で語る方が雄弁であった。
そして今日、俺たち二人は公園のベンチに並んで座っている。
二人は互いに傷だらけになった顔を見つめて、微笑みあった。
【動物縛り しりとり】
男『ガゼル』
女『ルリカケス』
男『スズガエル』
女『ルリビタキ』
男『キツネザル』
女『ルビー蝋虫』
男(つ…強い…)
男『シシバナザル』
男(さすがにこれで決まっただろ…『ル』から始まる動物はもうない!終わりにしてさしあげます!!)
女『ルリシジミ』
男『?!』
男(強すぎないか…?このお方は生物学者ですか?
ミから始まりルで終わる言葉がない…
仕方ない。返し辛そうな濁点で!』
男『ミズクラゲ!!』
女『ゲンジボタル』
男(ギャャァァァァ)
男『………』
男『ル…ル…』
男『ルーマニアデビル!!』
女『そんな動物いないわ。タスマニアデビルでしょ。ルーマニアヤマネコならいるけど』
女はにっこりと笑った。
男は二度とこのお方とは動物しりとりをするのはやめようと、心に誓った。
男『類人猿』
【やるせない気持ち】