"君は今"
深く深い山の奥
澄み切った空気を通して空を見る
君は今どこにいる
わたしのちっぽけな問いに答える様に風が吹いて
周りの木々を揺らす
生まれる感情はわたしの心に積み上がり続け
ぽっかりと空いたそこを埋める
ここで君を想うのはこれで3度目
1度目までは、君は確かにここにいた
何もできず、ただ守られていただけ
悲しくなって、恥ずかしくなって、その場で蹲った
昨日降った雨のせいだろう
雑草は真珠の様な水滴を乗せ、土はそれを含んでいる
泥に塗れたわたしはいつになく相応しい
なかなかどうして、わたしは生きているらしい
君の代わりに。
"物憂げな空"
晩冬の朝、窓に打ちつける雨音で目が覚めた
高い湿度を感じてやや憂鬱になる
体を起こして首を動かすと、時計は5:30を示している事を知る
早朝だというのに、空は泣くことで忙しい
ベッド横のカーテンを開け、流れる雨粒を見た
お前は何が悲しいのか、と問いかけてもただただ泣くばかり
私は身支度をして、外に出た
ザアザアと草木を濡らし、私が差している傘を通り抜けて脚に冷たい雨が伝っている
とっくに靴はびしょ濡れで、歩くたびに靴の中の水が揉まれるのを感じた
こんな雨の日は、私は決まって歌を歌う
傘の中でひとりきり、雨音で私の声などかき消される
空も私も、たったひとりでないている。
"小さな命"
ある日、よくわからない生命体を拾った。
近くの公園の柵の上できょろきょろしているところを発見した
手のひらほどの大きさで、ふわふわしていて可愛かったのでうちに連れ帰った
突然連れ去られたこともあり困惑している様子でいた
何か食べさせておこうと思って、チョコが混ぜ込まれたパンをちぎって目の前に差し出す
警戒心など何処かに忘れてしまったようで、差し出したらすぐに食べた
そんなことをしていれば私に大層懐いてくれたようで、どんな時も暇があれば私の手に擦り寄って嬉しそうにしていた。
体温が高く、手を添えているだけで暖かかった
一体こいつはなんなのか
気になりはしたが、調べることはなかった
牛乳や果物なんかを私の手ずから食べさせた
どんなものでも物怖じせず嬉しそうに食べる姿が可愛いと思った
ある朝、そいつは動かなくなっていた。
拾ってから一週間後のこと。
持ち上げてみると昨夜より少し軽く、無機物の様な印象があった
冷たい体から、もう生きていないということを小さく告げられる
ゴムのように少し硬くなったそれを、気味が悪いと思ったことは、きっとおかしいのだと思う
私はそのまま家を出て庭先に手で穴を掘った
そっと穴の底に横たわらせ、両手で包み込む様に柔らかい土を被せた
手頃な石を見つけて、突き刺しておく
家の中に戻った時、確かにいつも通りになった部屋になったことを実感した。
"Love you"
ある夜のこと、バスに揺られている私は独りだった
伝えたかった、伝えられなかった言葉が頭の中で溢れて止まらない
胸の中がいっぱいで満たされている
幸福感と圧迫感とが共に押し寄せる
窓の外には懐かしい通学路が広がり、焦燥感が一層湧きあがり眩暈がしてくる。
自業自得だ、独りで勝手に苦しくなって惨めになっているだけ
こんなことになるから最初から会えなければ良かったと思うのに、会えて良かったなんて思っているチグハグな心に追いつけない
でも、二度と会いたくなんてない
わたしの知らないところで、笑ってて
"太陽のような"
燃え続けるのは疲れてしまう
ただの自己満足だったとしてもそれは変わらないこと
たくさんの空気を吸い込んで
誰にも聞かれないように細く細く吐き出して
そっと心の中で燻っていた本音を曝け出す
誰かに聞かれては、たまらない
ずっとずっと心の中で大切にしまい込んでいたそれを、
また、誰にも言えないまま
そっと心の奥にしまい込んだ。