"どうして"
あの日、確かに私はそう言った。
驚いた顔をした君は、すぐにいつもの顔に戻って続けた。
返ってきた言葉は、私が期待したものでも無い
なんとなく予想していた言葉の通りで、軽蔑する。
君は、全く私の気持ちを汲もうとはしないのね
あなたは、私の心に触れようともしない
この人は、自分のことを愛してやまない人である
改めて、その時理解した。
目の前のこれに時間をかけて、期待しても無駄なのか
何度もそう自らを諭してきたのに、どうしても願わずにはいられなかった
自らの甘さに失笑してしまう。
人はそう簡単には変わらない。期待するだけ無駄である
君のへの解像度の高さと、信頼度の低さはピカイチ
誰にも負けない、なんて
さようなら、二度と私の目の前に現れないでね。
"夢を見てたい"
ふらふらと、脚を彷徨わせて座っている。
木々と、灯籠を抱えた美麗な庭しか見えない縁側で
ただずっと、もどかしく思っていた。
何かはわからないが
何かをしなければいけない、ことはわかる。
チチチッと小鳥が鳴いて、そんな私を侮蔑する
何処へ行こうというのか、絶えず前後に振れている脚と、とくんとくんと小さく刻む心臓だけが動いていることに、意識が向いている。
ふと、息をしていないことに気付いた。
苦しくなって私は咳をする。この世で私だけが滑稽だった。
辺りにその音だけが耳の中で鳴り響く。
どうしてそんなに惨めなの?
頭の中に声が響いて、喉の奥から空気が抜ける音がする
理由を知りたい。確かめたい。なんとかしたい。
だが、とっくに冷えた頭は思考すらできない役立たず。
何もできない臆病者ね
頭の中の誰かが私を笑い、軽蔑している。
四肢を動かすのが億劫になって、風に煽られる木々をただ眺めた日になった。
"ずっとこのまま"
平日の朝、いつもの喧しいほどの音で目を覚まして
布団から出て洗面台へ向かう。
いつも通りの朝。
身支度を整えて、ご飯を食べて、もう一度洗面台へ向かった。
いつもの髪飾りを手に取る。
いつか、君が付けていた髪飾りを引き継いで、毎日私の髪に結えている。
目の前で儚くなった君に、報いたいと感じているから。
そんなことをしても意味は無い、自己満足にしかなり得ないこと。
それは私が一番よくわかっていることだった。
私が願うのは幸福でも、不幸でもなかった。
ただ何も変わらず、失うこともない
ただずっと、いつも通りに
ふと時計を見るといつも家を出る時間を過ぎている。
私は焦って鞄を肩に掛け、玄関のドアノブに手をかけた。
"寒さが身に染みて"
ずっと、水の中で藻搔いている気がする。
上下左右もわからず、何処に進めばいいのかわからない
左手の方に進んでみれば殴られた、ならばと右手の方に進んでみれば首を絞められた。
そんなことを繰り返していると疲れてしまったので、ただただ彷徨って、漂って
そうしていればいずれ浮いて解放されるのかもしれない。
正解は諦めることだった!
なんて希望を抱いてみても、何も変わらないのが現実らしくって。
迷っていればいずれ水が泥に変わり果てて、
もっともっと苦しくなる。
ずっと心臓を握り締められていて
ずっと頭の奥が冷えている。
ずっと錘が四肢に引っかかっていて
ずっと肺の中にモヤモヤが居座っている。
もうどうすればいいのと嘆いて蹲ってみても誰も助けてくれなかった。
私はどうすればいいのだろう。
どう、したいのだろう
"20歳"
先月、2人目の兄が20歳を迎えた。
先週、1人目の兄がお酒を初めて飲んだらしい。
20歳になることに期待している一方で、自立した大人になれるのかという懸念がある。
今の自分では到底思い描けないので、やってみたいことを思い浮かべることがある。
お酒を飲んでみたい。飲んだらどうなるのか知りたい
タバコを吸ってみたい。父のように煙を操りたい
20歳とは人生の中でとっても大きな節目だと思う。
もしかしたら、まだまだ子供の私の感性だからこそそう思うのかもしれないけれど
優秀な兄たちと比べて未熟な点が目立つ私は、まだまだ大人になることは出来ない。