少し前このアプリを開いたら、ハート♡の数がゼロになっていて、お気に入りも消えていた。
お題の投稿どころじゃなくて、何度かやり直した後、一旦落ち着こうとアプリを閉じた。
少し時間をおいて再度アプリを開いたら、ハート♡の数がゼロからひとつずつどんどん増えていって、元の数まで戻った(多分)
お気に入りも復活していた。
なんだったんだろう。
『瞳をとじて』
母の愛に勝るものはないと人は言う。
それは無償の愛だと。
なぜ父の愛については触れられないのだろう。
父親の愛情は無償ではないのか?
淡いベージュに塗られた天井をぼんやりと見上げながら、そんなことを思う。
ああ、駄目だ。
考えたり、感じたり、思い出したりする時間が多いのは危険だ。
せめて対等に話ができる誰かがいれば、少しは気も紛れるのだろうが、この部屋には私とこの子だけ。
この子が生まれたその日から、この子が私の世界になり、この子を中心にすべてが回っている。
この子が消えてくれたらいいのに、と思うことがたまにある。
そして、そんなことを思う自分が嫌になる。
だから私は大丈夫なふりを、幸せなふりをする。
酷く疲れるけれど、そうしないととても怖いことが起こりそうな気がするから。
眠る子の顔に目をやる。
じっと見ているうちに、自然と手が伸びる。
指先が触れそうなその時――この子が笑った。
突然パッチリと目を開けて、泣きもせずにキャッキャと声を上げて笑った。
慌てて手を引っ込めて、ぎゅっと強く握る。
瞳を閉じて、何度も自分に言い聞かせる。
もしも本当にこの子が消えてしまったら、私の世界が、私のすべてが失われるのだ、と。
『あなたへの贈り物』
普段は触ったこともない漢和辞典を開く。
ネットで流行りのものを検索する。
親戚や知人友人たちを思い浮かべる。
姓名判断のサイトを熟読する。
伴侶と二人でそれぞれの希望を出し合う。
両親や義両親から口出しされる。
――それに抗う。
唯一無二のものを贈りたいと思う。
なんとか幾つかに絞ったものを親友に見せる。
ダメ出しされる。
なんだコレは、落ち着け、と諭される。
唯一無二なのは名前じゃなくて、あなたそのものなのだと気づく。
もう一度、伴侶と話し合う。
ふたりでうんうん唸りながら、ありったけの願いを込める。
親となった私たちからの、
初めてのあなたへの贈り物は、
こうして決まったのです。
『明日に向かって歩く、でも』
部屋の隅で物音がし、思考が断ち切られた。
私の頭は、いつも決着のついていない考えで溢れかえっている。
あの時ああしていれば。
あの時こう言っていれば。
前向きに考えろと人は言う。
――どうやって?
心はぐちゃぐちゃで頭も働かない。
疲労で思考が停止し、ぼんやりするだけ。
とりあえず、日常生活を送らなくてはという思いだけで体を動かす。
まずは手を洗って、
血を拭き取って、
それから、
コレをどこかへ隠さなくては。
ゆっくりと立ち上がり、思案する。
起こってしまったことは仕方ない。
私は明日に向かって歩く、でも――昨日までとは違う世界が始まるのだろう。
『ただひとりの君へ』
みなさんは「手のひらの宇宙」理論を知っていますか?
ええ、こうして両手で何かを掬うような形にした時に発生する小宇宙のことです。
今となっては広く知られたこの理論も、もとはと言えばひとりの主婦が発見したものでした。
彼女は毎日家事をする中で、時折不思議な現象を感じ取っていました。
しかし言葉にできないその感覚を、誰にも言わなかったそうです。
言っても仕方がない。
誰も聞いてくれない。
頭がオカシイと言われるかも。
自分だけが気づいた物事というのは、人に話すには勇気がいります。
ましてや、彼女にはなんの肩書もありませんでした。
しかし真理とはそこにあり、それを発見するのに肩書も学歴も要りません。
例えば料理は化学です。
水を沸騰させるのも、肉や魚を炙るのも、我々が“味付け”と呼んでいる調味料による味の変化も、すべては化学です。
とするならば、彼女は優れた化学者なのです。
かといって、特別な人間というわけではありません。
普段送っている生活のすべては何かしらの作用や反応の集積なのですから。
鼻歌を歌うあなたは、原子と人体の深淵を覗くかもしれない。
原っぱに寝転んで雲を眺めているあなたは、地学や気象学を自ずと探求しているのかも。
そんな可能性を持った、ただひとりの君たちへ。
日々の暮らしをおくることで、この世界の真理はいつでも解き明かすことができるのかもしれませんね。