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『瞳をとじて』

母の愛に勝るものはないと人は言う。
それは無償の愛だと。

なぜ父の愛については触れられないのだろう。
父親の愛情は無償ではないのか?

淡いベージュに塗られた天井をぼんやりと見上げながら、そんなことを思う。
ああ、駄目だ。
考えたり、感じたり、思い出したりする時間が多いのは危険だ。
せめて対等に話ができる誰かがいれば、少しは気も紛れるのだろうが、この部屋には私とこの子だけ。
この子が生まれたその日から、この子が私の世界になり、この子を中心にすべてが回っている。

この子が消えてくれたらいいのに、と思うことがたまにある。
そして、そんなことを思う自分が嫌になる。
だから私は大丈夫なふりを、幸せなふりをする。

酷く疲れるけれど、そうしないととても怖いことが起こりそうな気がするから。

眠る子の顔に目をやる。
じっと見ているうちに、自然と手が伸びる。
指先が触れそうなその時――この子が笑った。
突然パッチリと目を開けて、泣きもせずにキャッキャと声を上げて笑った。

慌てて手を引っ込めて、ぎゅっと強く握る。
瞳を閉じて、何度も自分に言い聞かせる。
もしも本当にこの子が消えてしまったら、私の世界が、私のすべてが失われるのだ、と。

1/24/2025, 9:17:58 AM