『こんな夢を見た』
おや、漱石の『夢十夜』か?
今日のお題を見て、まず思ったことだった。
こういうお題の時は、みんなの見た夢の話がいろいろ語られて面白い。
よく、「人の見た夢の話を聞くのは退屈だ」という言葉を聞くけれど、それは取り留めもなく、整合性もオチもない話を聞き続けるのに飽きてしまうからだろう。
文章化されたものは、不思議系のショートショートのようで興味深い。
そう思いながら、みんなの投稿を読んでいく。
ふと、ある投稿に目が止まった。
そこに書かれているのは、昨夜私が見た夢だ。
目覚めると記憶が薄れていくのが当たり前の夢の中でも、一際はっきりと覚えている夢。
その人の過去の投稿も読んでみる。
あれも、これも、全部全部、私が体験したことや、言ったこと、やったことばかり。食べたものや、買ったものまで。
これは、いったい――
そんな夢を見た。
『タイムマシーン』
もしもタイムマシーンがあったなら、過去と未来どちらに行きたいか。
よくある質問だが、私は断然過去派だ。
というか、子供の頃から未来へ行きたいと思ったことがなかった。
あの時ああしていれば。
あんなことをしなければ。
あの言葉を取り消したい。
過去に戻ってやり直したいことがいっぱいある。
それに加えて、年月を経るにつれて会えなくなった人達も増える。
鬼籍に入ってしまった人。
遠くへ行ってしまった人。
疎遠になってしまった人。
そういった人達に、もう一度会いたい。声が聞きたい。話がしたい。
うんと遡って、平安時代の宮中も見てみたい。
歴史に名を残す偉人達にも会ってみたい。
タイムマシーンは浪漫だよねぇ。
『特別な夜』
村の言い伝え通り、百年に一度の赤い月の昇る夜が来た。
この日、村人は一人残らず広場に集まり、一晩中踊り明かさなければならない。
「絶対に、足を止めちゃダメよ」
今はもういない親友の言葉を胸に、私は無心でステップを踏み続ける。
周囲では村人たちが、恍惚とした表情で激しく舞っていた。
奇妙なのは、誰一人として足音を立てていないことだ。
数十人が踊っているというのに、広場は静まり返っている。
ふと、隣で踊っていた誰かがよろけて動きを止めた。
その瞬間、赤黒い靄が辺りを覆い、目を開けるとそこには誰もいなかった。
驚いて周囲を見渡すと、それまで踊り続けていた者たちが一斉にこちらを向き、音のない拍手を始めた。
無事に、乗り越えられた。
これであと百年は大丈夫だと。
『海の底』
深い深い海の底。
そこは光が差さず、静寂だけが支配する世界。
探査艇の小さな窓の外でライトが照らし出したのは、見渡す限りの「本棚」だった。
潮の流れに揺れることもなく、無数の古書が整然と並んでいる。地上では絶滅した革表紙の背には、金箔で文字が刻まれていた。
「……誰がこんな所に」
操縦士が呟いた瞬間、一冊の本が勝手に開いた。
ページから溢れ出したのは、インクではなく、鮮やかな記憶の光。
かつて地上で語られていた恋の言葉、忘れ去られた歌の歌詞。
それらが泡となって窓を叩く。
ここはきっと。
地上から零れ落ちた大切なものを、海が密かに拾い集めて綴じ直した書庫なのだ。
窓越しに手を伸ばすと、ひと際古い一冊に『海底二万里』というタイトルが見えた。
『君に会いたくて』
会いたくて会いたくて震えると唄う曲があったっけ。
私はいま、寒波に震えてる。