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『ただひとりの君へ』

みなさんは「手のひらの宇宙」理論を知っていますか?

ええ、こうして両手で何かを掬うような形にした時に発生する小宇宙のことです。

今となっては広く知られたこの理論も、もとはと言えばひとりの主婦が発見したものでした。
彼女は毎日家事をする中で、時折不思議な現象を感じ取っていました。
しかし言葉にできないその感覚を、誰にも言わなかったそうです。

言っても仕方がない。
誰も聞いてくれない。
頭がオカシイと言われるかも。

自分だけが気づいた物事というのは、人に話すには勇気がいります。
ましてや、彼女にはなんの肩書もありませんでした。

しかし真理とはそこにあり、それを発見するのに肩書も学歴も要りません。

例えば料理は化学です。
水を沸騰させるのも、肉や魚を炙るのも、我々が“味付け”と呼んでいる調味料による味の変化も、すべては化学です。

とするならば、彼女は優れた化学者なのです。
かといって、特別な人間というわけではありません。
普段送っている生活のすべては何かしらの作用や反応の集積なのですから。

鼻歌を歌うあなたは、原子と人体の深淵を覗くかもしれない。
原っぱに寝転んで雲を眺めているあなたは、地学や気象学を自ずと探求しているのかも。

そんな可能性を持った、ただひとりの君たちへ。

日々の暮らしをおくることで、この世界の真理はいつでも解き明かすことができるのかもしれませんね。

1/20/2025, 9:47:03 AM