Open App
1/9/2025, 9:58:21 AM

『Ring Ring …』

みんなに私の秘密が全部知られてしまうという夢を見ていた時、リンリンというアラーム音で目覚めてほっとした。

旧式の電話の音は、初めて聞いたときからどこか気分を落ち着かせてくれる。
画面をタップして音を止めたが、静かになった部屋に誰かの息づかいが聞こえて体が強張った。

そっと周りを窺っても、人の気配はない。
しばらく息を詰めていたが、ふと手の中のスマートフォンからその不審な音が聞こえているのに気がついた。
画面を見るとアラームではなく、通話になっている。

慌てて通話を切った。
ちょっと考えてから電源も落とす。

薄気味悪さを振り切るように体を起こし、身支度を始めた。
顔を洗って朝食の支度にとりかかった時。

リンリンと音がした。
さっき止めたはずなのに、また。

1/8/2025, 7:31:50 AM

『追い風』

背を押す風に身を任せ、なんとなくぽてぽてと歩く。

寒いけど体はがっちり着込んで防寒しているし、ニット帽に覆われた耳も暖かい。この時期は、マスクも防寒具になる。

白い山茶花が清々しい。
赤い椿は艶やかだ。
まだ黄色いあの実は千両だな。
あっちの赤いのは万両か。
背の高い笹のような葉に赤い実は南天。
鈴なりに生っている黄緑色は金柑か。

スマートフォンでパシャパシャ写真を撮って、あとでSNSにアップしようと保存する。

病み上がりで体力が落ちているからと散歩に出たが、なかなか良い気分転換になった。

風の吹くまま、気の向くまま。
そういうのも、たまにはいいな。

1/7/2025, 9:46:20 AM

『君と一緒に』

あの日あの時、僕は君と一緒にいた。
それは他ならぬ君が一番よくわかっていることだ。
なのに、なぜ君は僕を責めるように見ているのか。まったく理解できないね。

例えばの話。
君が抱いている疑念が正しかったとして、僕はどうやって事に及ぶ事が出来たのだろう。
この街の住人であの大学の卒業生は君だけだ。他の皆にはそこまでの頭も経済力もないからね。
事件現場にはあの大学の卒業記念バッジが落ちていた。
もう一度言うけれど、この街であの大学を卒業しているのは君だけだ。当然あのバッジを持っている住人もいない。君を除いては。

さて、決定的ともいえる証拠の品のおかげで君は拘置所に留め置かれた。
その間、君のご両親が僕のところへやってきてね、頭を下げて頼まれたんだ。なんとしてでも息子を助けてたい知恵を貸してくれ、と。

君は随分と僕のことを買ってくれていたようだね。ご両親に君が僕をいつも褒めていたことを聞かされて面映ゆかったよ。
ならば僕はその友情に応えなければならない。
だからちょっとだけ、そう、ちょっとだけ、ご両親に零したんだ。もしもの話をね。

もしも近日中に、似たような殺人事件が連続して起きたとして、そのいずれにもあの大学の卒業バッジが落ちていたとしたら、君ではない誰かの手による連続殺人事件と警察は考えるのではないか、と。
だって君は拘置所という完全なアリバイが証明される場所にいるのだから。

ご両親は知らなかったようだが、僕はあの大学の卒業記念品を取り扱っている洋品店を知っている。ここから電車に乗って1日で往復して帰ってこられることも。
大事な思い出の品を失くしてしまって買い直す人間が、多くはないがそこそこいることも。

ところで、僕はあの大学で君と同期だった男とよく似ているらしい。その彼が、つい最近バッジを買い求めたらしいが、不思議な縁だね。

さて我が友よ。
もう帰ろう。ご両親が待っているよ。
愛情深いお二人に早くその顔を見せてあげなくては。

1/6/2025, 7:56:32 AM

『冬晴れ』

曇りがちな冬の中で、冷たく冴えた晴れ間は貴重に感じる。
あいにく、今現在うちのほうは雨天で太陽は覗いていないけど。

ところで今日、1月6日はエピファニー(公現祭)だ。
イエス・キリストが生誕してから聖十二夜を数え、今日の公現祭でクリスマスは終わりを迎える。

だからクリスマスツリーも本来なら今日まで飾っておき、2月2日のキャンドルマス(聖燭祭)で燃やす。それをしないとゴブリン化するという話もあるのでご注意を。

私はクリスチャンではないので、そこらへんの諸々は関係ないけれど、体調不良で未だ初詣に行けずにいるから古い御札や御守りのお焚き上げをお願いできていないんだよなぁ。

1/5/2025, 9:54:07 AM

『幸せとは』

禍福は糾える縄の如し。

辛くてしんどくて良いことなんて何もないと思っているこの時が、後で幸せへと繋がる細い糸になることもある。

そしてそれは逆のことも言えるのだ。一寸先は闇である。

幸せとは、なんて真面目に考え出すとロクなことにならない。
些細なことで一喜一憂するのが人なのだから。

今日は手に手を取って微笑みあっている者が、明日には罵り合い唾を吐いているかもしれない。

意味のないつまらない毎日が、後から薔薇色の日々に思えるかもしれない。

幸福も不幸もなく、ただいっさいは過ぎてゆく境地に至るやも――

せめて笑っていられるように、地味にコツコツやるだけですよ。

Next