『良いお年を』
子供の頃は、新しい年が来ることの意味もわからずに、ただ大人たちや世間の雰囲気に当てられて、「夜更かししても怒られない!すごい!」と、ふわふわした楽しい気持ちで年を越していた。
ありきたりだった年の瀬の挨拶が、少しも当たり前のことじゃないのだと身に沁みるようになったのはいつからだろう。
ふたつ歳上の先輩が、若くして病で逝ってしまった年からか。
身体に怪我はなかったものの、家の一部が壊れ、自然災害で大変な思いをした年からか。
世界規模で疫病が蔓延して、外出もままならなくなった年からか。
おまけに、人によっては来年もまた会えるかどうかわからない、繋がりの薄い関係性の人も増えた。
みなさん、どうかお気をつけて。
あなたもわたしも、良いお年を。
『1年間を振り返る』
いつものお題と違って、このお題はみんなの1年を垣間見る楽しさがあっていい。
普段は作品だけを投稿して自分を出さずにいる人も、普段からエッセイや日常話で自分を前面に出している人も、このお題にはついなんとなく正直な感想を吐露してしまうのではないだろうか。
みんなの投稿ひとつひとつに、その人の顔が見えるような気になって、心の中で声をかけたりツッコんだりしている。
「まあ、そんなことが」とか、
「大変だったんですね」とか、
「平穏無事でなにより」とか。
そういうお前はどうなんだ?と言われると、大枠としては可もなく不可もなく、けれど着実に体力は衰えていて、今は罹患したインフルエンザのせいで年内中は外出禁止です。
ああ、1年の最後が病気療養だなんで締まらないなぁ。
『みかん』
この時期なら炬燵でみかんが風物詩なんだろうけれど、お題を見て最初に浮かんだのは夏みかんだった。
昔の国語の教科書に載っていた不思議な話。
タクシー運転手が道路の真ん中に白い帽子を見つける。そのままでは車に轢かれてしまうと親切で退けようとしたら、中からモンシロチョウが飛び立った。
おそらく子供が捕まえて、虫かごを取りに行っていたのだろう。悪いことをしてしまったと、蝶の代わりに自分が持っていた夏みかんを帽子の中に入れておく。
車に戻ると小さな女の子が乗っていて、「菜の花横丁まで」と行き先を告げるが、目的地へたどり着いた時にはその子は消えていて、辺りにはモンシロチョウが飛んでいた。
怖さはなく、どこか温かみを感じる話だった。
帽子の中身が蝶から夏みかんに変わっていたのを見た子供は、どれだけ驚いたろう。
捕まっていたのを助けられた蝶は、お礼のつもりで乗車したのだろうか。
まだ熱が引かない頭でぼんやり考える。水分補給にみかんでも食べるか。
『クリスマスの過ごし方』
今、熱を出して寝込んでいるので、ベッドの住人です。
そんなわけで、今日の更新はこれだけで申し訳ない。
起き上がれるようになったら、またポチポチ文章打つので、その時はよろしくお願いします。
『イブの夜』
もしもし、ばあちゃん?
オレだよ、オレ。
なんだ? 孫の声も忘れちまったのか? ふざけんなよ。
ああ、うん、わかりゃいいんだよ、わかりゃあ。
それでさ、ちょっと頼みっていうか、なんだ、その、あー、この後そっちにオレの知り合いが行くからさ、そしたら玄関に出て、受け取ってほしいもんがあるんだ。
え? なんだっていいだろ! 黙って受け取りゃいいんだよ!
え? もう来た? チッ、早ぇな。
ああ、じゃちょっと出てくれよ。え? あ、おい、スマホ切れって。おい、そういうとこだぞ。不用心だな。
あ? 派手だって? 何が?
ああ、あのジジイの格好な。あれ、アイツの制服なんだよ。赤地に白い縁取り? ああ、外人だからな、ああいうの平気なんだろ。
鹿がいてびっくりした? トナカイっつーんだよ。でけぇよな。鼻赤かったろ。ピカピカ光ってた? 笑ってやるなよ、気にしてんだ。
オレ、いまあのジジイのとこで働いてんだ。今が一番の繁忙期でよ。うん、だからそっちには帰れねぇな。
で、受け取ったか? 中見たか?
こっちのほうは寒いからよ、いい毛糸がいっぱいあんだよ。それで編んでもらったからさ。
そっか、気に入ったか。ならいいよ。
うん、まあ、正月には顔見せられるかもしんねぇな。
じゃ、な。あったかくしろよ? 戸締まり忘れんな。鍵ちゃんと閉めろよ? じゃあな。