『みかん』
この時期なら炬燵でみかんが風物詩なんだろうけれど、お題を見て最初に浮かんだのは夏みかんだった。
昔の国語の教科書に載っていた不思議な話。
タクシー運転手が道路の真ん中に白い帽子を見つける。そのままでは車に轢かれてしまうと親切で退けようとしたら、中からモンシロチョウが飛び立った。
おそらく子供が捕まえて、虫かごを取りに行っていたのだろう。悪いことをしてしまったと、蝶の代わりに自分が持っていた夏みかんを帽子の中に入れておく。
車に戻ると小さな女の子が乗っていて、「菜の花横丁まで」と行き先を告げるが、目的地へたどり着いた時にはその子は消えていて、辺りにはモンシロチョウが飛んでいた。
怖さはなく、どこか温かみを感じる話だった。
帽子の中身が蝶から夏みかんに変わっていたのを見た子供は、どれだけ驚いたろう。
捕まっていたのを助けられた蝶は、お礼のつもりで乗車したのだろうか。
まだ熱が引かない頭でぼんやり考える。水分補給にみかんでも食べるか。
12/29/2024, 2:13:27 PM