『イブの夜』
もしもし、ばあちゃん?
オレだよ、オレ。
なんだ? 孫の声も忘れちまったのか? ふざけんなよ。
ああ、うん、わかりゃいいんだよ、わかりゃあ。
それでさ、ちょっと頼みっていうか、なんだ、その、あー、この後そっちにオレの知り合いが行くからさ、そしたら玄関に出て、受け取ってほしいもんがあるんだ。
え? なんだっていいだろ! 黙って受け取りゃいいんだよ!
え? もう来た? チッ、早ぇな。
ああ、じゃちょっと出てくれよ。え? あ、おい、スマホ切れって。おい、そういうとこだぞ。不用心だな。
あ? 派手だって? 何が?
ああ、あのジジイの格好な。あれ、アイツの制服なんだよ。赤地に白い縁取り? ああ、外人だからな、ああいうの平気なんだろ。
鹿がいてびっくりした? トナカイっつーんだよ。でけぇよな。鼻赤かったろ。ピカピカ光ってた? 笑ってやるなよ、気にしてんだ。
オレ、いまあのジジイのとこで働いてんだ。今が一番の繁忙期でよ。うん、だからそっちには帰れねぇな。
で、受け取ったか? 中見たか?
こっちのほうは寒いからよ、いい毛糸がいっぱいあんだよ。それで編んでもらったからさ。
そっか、気に入ったか。ならいいよ。
うん、まあ、正月には顔見せられるかもしんねぇな。
じゃ、な。あったかくしろよ? 戸締まり忘れんな。鍵ちゃんと閉めろよ? じゃあな。
12/25/2024, 8:02:21 AM