ゾンビ映画を見た
最後は主人公とヒロインがキスして終わるやつ
ハッピーエンド感出してるけど、別にゾンビが消えた訳でもない話
デートでこのチョイスはどうよ?と思わなくはない
感想を語り合いながら
「世界の終わりに君と一緒にいれたら、、、」
なんて言葉に頬を染めてうなづいて
それでも心の芯は冷え切っている
どうせ、本当にそうなれば一目散に1人で逃げるだろって思う程度には気持ちは冷めている
世界の終わりに君と一緒にいるぐらいなら
早くゾンビになりたいわ、なんて思う前に、お別れした方がいいのかもしれない
下を見ながら歩いていると
ポタポタと目の前の地面に雨粒が落ちて来た
雨かな?
空を見上げると、晴天
頬に当たる雨が重力にしたがって顎まで流れ落ち
雨水の通り過ぎた部分がヒヤリとする
晴れてるのに雨
狐の嫁入りってやつかな?
また、するりと頬を流れた雨水が口の中へ
口内に塩味が広がる
ん?しょっぱい雨水?
次々に頬から伝う雨水が、流れ落ちていく
あぁ、雨ではなく涙なのか
そう理解して、また下を向き歩き始める
私の通り過ぎた道に転々と落ちている水が
止まる日は来るのだろうか
その時、この胸の痛みも止まるのだろうか
今日も明日もその先の日々も
私の心は梅雨模様
子供は風の子、なんて言葉がある
どんな天気の日だって、子供は外で遊ぶもの
なんて言われていた時代
炎天下の空の下、小麦色の肌で走り回った
輝かしい日々
未来は光り輝き希望に溢れていた
鏡を覗き、シミの数を数え、ため息をつく
あの頃の私へ、伝えたい
UVケア、超大事
病める時も健やかなる時も、、、
永遠の愛を誓いますか?
「はい、誓います」
夢にまで見た彼との結婚式
素敵な教会で、色とりどりの花に囲まれて
永遠の愛を誓う
ここまで辿り着くまでに沢山苦労したわ
彼好みの格好や見た目に気を遣って
どんな悩みも肯定して励まして
家に帰りたくないなら、私の家に泊まれば良い
外泊はマズイという彼にお酒を沢山飲ませて既成事実
奥さんにもキチンと外泊の連絡をして
ヒステリックに叫ぶ奥さんは笑えたわ
そんなんだから、取られちゃうのよ
仕舞いには、慰謝料だ何だって騒いでさ
お金ならいくらだって払うわよ
パパに頼めば簡単だったもの
これからは私が幸せになる番よ
【ハッピーエンド】
「え?マジで?」
「マジ、マジ!略奪婚なんだって!」
「年上すぎじゃんって思ったけど、それはないわ〜」
「ねー!百歩ゆずって超イケメンで高収入とかならだけど〜冴えないオジじゃん、なんか相手も職場居づらくて辞めちゃって無職だって」
「無職オジなのに式めっちゃ豪華じゃん、あの子実家太かった?」
「普通の会社員家庭だよ!たぶんパパ活で稼いだ金じゃん?昔からやってるよ、あの子」
「引くわ〜、あれで永遠の愛(笑)とか」
「ね〜、お互い何処が良かったんだか。まぁお似合いっちゃお似合いだわな」
【ハッピーエンド】
その向こう側は誰も知らない物語
まさに運命の出会い
真っ直ぐに私を見つめる、つぶらな瞳
まんまるフォルムの白いボディ
ゲームセンターのクレーンゲーム
ガラスの向こう側で
君は王者の風格で、そこに鎮座していた
「くっ、あとちょっとだったのに!」
出会いから30分
私は未だ思い通りにいかないクレーンの前にいた
あと少しなのだ
一回進めるごとに少しずつ、しかし確実に
あの子はゴールへと近づいている
手のひらを見る
3000円分両替したはずの硬貨はもうない
1つのゲームに賭けるには十分過ぎる額だ
もう諦めなければ
残念だが、これもまた運命
別れの挨拶をとあの子を見つめる
そしてー
あの子のその瞳に見つめられると
私の決心はサラリと消え去り
再び財布へと手が伸びるのであった