まにこ

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3/4/2025, 1:33:41 AM

はらり、薄っぺらな花弁が落ちていく。
これが最期の一枚だった。
「それでは、ごきげんよう」
永久の別れを貴女に告げて、手のひらをひらひら振る。
私はここでお別れだ。
ゆっくりと時が止まる音がする。
それでも前へ前へと進んでいく貴女に祝福を。

3/3/2025, 1:04:25 AM

おじゃんにされたピクニック。
理由は天から降ってきた謎の忍者。
貴方は一体誰かしら?
分からない、けれども今では大事なお兄ちゃん。
いつの間にか彼は先生となり、私だけのお兄ちゃんでは無くなった。
ほんのり塩味のする飴玉を一つ、舌先に転がしてみる。
ぽたり、零れたのは何だったのか。
いつか必ず貴方を追い掛ける。
ガリリ、奥歯で飴を噛み砕いた。

3/1/2025, 10:36:02 PM

いつも一緒にいるのが当たり前だと思っていた。
温かく見守ってくれているのがとても心地よくて。
好いた者同士は結ばれると実父から聞いていたから、自然と口にしていた言葉。
「すき、けっこんしてくれる?」
「お、一丁前に口説いてんのか」
お前も言うようになったなァ、なんて頭をわしゃわしゃと撫でられる。
これは果たして了承を得たのだろうか。
幼心ながらに不安を覚えた。
それからはことある事に求婚するようになる。
都度、何だかんだ適当にはぐらかされていると気付いたのは何時の頃だったのだろう。
「あの時の約束……覚えていますか」
「え、あ、あ……お前がもっと大人になったらナ」
明らかにどこか困惑の色を滲ませている。
手を繋いで二人で買い物帰りの時に言う内容では無かったか。
この人との確約が欲しい、初めてそんな気持ちになった。
「耳を貸して」
「ん、なんだ?」
その場ですぐに視線を合わすべくしゃがみこんでくれる。
そういうところも、好き、だ。
心の奥で何かが柔らかく芽吹く。
ネクタイを自分の元へぐっと引き寄せ、その頬に触れるだけの接吻をする。
「お、おま……!」
頬を押さえてほんのり桃色に染まる養父が可愛らしくて仕方ない。
「約束、です」

3/1/2025, 12:47:23 AM

酔った勢いだった、とか、ノリでやってしまった、とか。
いくらでも御託を並べることはできた。
しかし、最終的にそれを受け入れると決めたのは自分だ。
心の奥底に秘めたる思いを暴かれてしまった。
否、醜い己の感情を見て見ぬふりをしていただけだ。
「あれを無かったことにはさせません」
いつの間にいたのか、後ろからギュッと抱き締められる。
擽ったいような、それでいて身を委ねてしまいたいような、そんな心持ちがした。
とくとくと、二人の鼓動が柔らかく重なる。
「……温かいね」
「はい」
もっと温かくなりましょう、お兄ちゃん
耳元でそっと囁かれる。

2/28/2025, 1:40:05 AM

何だ、この可愛い生き物は。
初めは中々警戒心を解いてくれなかったこの少年も、今では己の膝の上ですぅすぅと寝息をたてて眠ってくれるまでになった。
ふんわり柔らかな髪をそっと撫でる。
気持ち良いのか、撫でている手に頭をぐいぐいと押し付けてきた。
心の奥で毛糸玉がころころと転がるような柔らかな気持ちになる。

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