いつも一緒にいるのが当たり前だと思っていた。
温かく見守ってくれているのがとても心地よくて。
好いた者同士は結ばれると実父から聞いていたから、自然と口にしていた言葉。
「すき、けっこんしてくれる?」
「お、一丁前に口説いてんのか」
お前も言うようになったなァ、なんて頭をわしゃわしゃと撫でられる。
これは果たして了承を得たのだろうか。
幼心ながらに不安を覚えた。
それからはことある事に求婚するようになる。
都度、何だかんだ適当にはぐらかされていると気付いたのは何時の頃だったのだろう。
「あの時の約束……覚えていますか」
「え、あ、あ……お前がもっと大人になったらナ」
明らかにどこか困惑の色を滲ませている。
手を繋いで二人で買い物帰りの時に言う内容では無かったか。
この人との確約が欲しい、初めてそんな気持ちになった。
「耳を貸して」
「ん、なんだ?」
その場ですぐに視線を合わすべくしゃがみこんでくれる。
そういうところも、好き、だ。
心の奥で何かが柔らかく芽吹く。
ネクタイを自分の元へぐっと引き寄せ、その頬に触れるだけの接吻をする。
「お、おま……!」
頬を押さえてほんのり桃色に染まる養父が可愛らしくて仕方ない。
「約束、です」
3/1/2025, 10:36:02 PM