高々三十数年生きてきただけでも懐かしいと思えることは両手に余るくらいにはある。
A子は学生時代の友人と久しぶりの再会を果たしていた。
あの先生面白かったよね とか 今考えると何かおかしかった校則のことと とか話は尽きない。
良い意味でもう過去はやりきったなあとA子は思う。
これから来たる未来に向けて、その礎となる過去をしっかり踏み締めて今を生きるのだ。
中には朽ち果てる過去もあるがそれはそれで構わない。
今とこれから先の未来のために全てにおいて無駄は無い。
読んでいた本をぱたり、閉じる。
「そう」はならなかったんだ。
もっと違う関係でもっと違う世界線で、二人が出逢えていたらまた違ったのかもしれない。
でもそうはならなかった。
アナザーストーリーを書くための力は備わっていないのだ。
こんな時こそ二次創作。
お手軽に「もしも」を引き出せる魅惑の代物だ。
特に本編が辛くて悲しくて救いが無い時こそ、より二次創作がキラリと光る。
じゃあ私が理想とする世界を創り出せばいいのか。
それは夢小説でもBLでも何でもいい。
あなたの思うIFを形にするのだ。
もう一つの物語、つくってしんぜよう。
おいでよ二次創作の沼!
目に見えるものだけが全てじゃないとお前は言う。
じゃあ今だってわざわざ電気を付けなくても良いじゃないかと言えばどうもそれは違うらしい。
分からない、少なくとも今は暗い方が全てを覆い隠してくれるからこちらとしては好都合だというのに。
「目に見えるものだけが全てじゃないなら、今だって暗くても良いだろう」
「それはそれ、これはこれじゃ」
強引に物事を進めようとしているのが分かって苦笑してしまう。
見たいんだな、要は。
暗がりじゃ見えないことがたくさんあるから、こいつにとって明かりは必須なんだな。
愛い奴。覆い被さってくる相棒の背中にゆっくりと手を回した。
遥か昔、イギリスの人々は萎れた茶葉を炒って煎じて飲んだらしい。
そのお陰で現在にわたるまで紅茶の文化がひろまったと言っても過言では無い。
かく言う私もそのおこぼれにあずかる人間の1人だ。
たっぷりのお湯でティーバックを蒸らす時のあの鼻腔を擽る香りと来たら。
紅茶ソムリエ、いつか資格を取りたいと思っているものの1つだ。
あなたもとっておきの時間に紅茶はいかが?
言の葉と書いて言葉。上手いこと名付けたなあと思うのである。
表に発するもの、その裏に隠された本当の意味。
それを丸ごと包み込んだのが「言葉」なのだろう。
貴方と僕だけの合言葉。愛と呪いとが一緒くたになっている。
愛でお互いを縛り、呪いでお互いを言祝ぐ。
そこには他者の入り込む隙間なぞ無い。
愛を込めて呪いをかけよう。
一生覚めない合言葉を貴方に。