まにこ

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8/24/2024, 9:39:29 PM

スポンジのように吸収する、とか茹だるような暑さ、とか。
自分の思いや感情を、手垢のついた表現方法でしか伝えられない時に、どうにもやり場のないじりじりした気持ちに駆られてしまう。
あの人ならもっとオリジナリティ溢れる言い回しができるだろうなとか、我ながらn番煎じでつまらん喩えだなとか。
でも、最近になってこうも思う。
確かに他と同じような、月並みな表現にはなってしまうかもしれない。
しかしそれでも、古着屋さんや古本屋さんで売られている商品みたいに、その言葉はどこそこの誰兵衛の手に渡ったり袖を通されたりして、確りと愛されていたのではないのかとも。
特に昔からずぅっと使われ続けている言葉なんて、淘汰もされずに生き残っているなんて、遥か昔から現代に渡って人々の心に生き続けている証拠だと思うのだ。
そう考えれば、古の人にならって私もそれを踏襲するのは満更悪いことでもないのだろうな。
温故知新。故きを温め新しきを知る。旧いことも新しいことも全て大切、常に勉強勉強。
いつの間にか私のやるせない気持ちは宇宙の果てまで飛んでいってしまったようだ。

8/23/2024, 10:10:38 PM

今、キラキラと凪ぐこの海面が、実は色々な顔を見せることを私は知っている。砂浜に咲く色とりどりのパラソルの下で、実はとんでもなく心温まるストーリーが展開されていることも。
A子は、灼けた堤防の上で一人三角座りをしたまま、自身の膝に顔を埋める。

私にもかつては連れ合いがいて、一緒に行くぞと誘ってくれる人達もいた。

今は皆どこへ行ってしまったのだろう。もしかして海の藻屑へと消えてしまったのかしら 笑

海を見つめる彼女の瞳には確かに仄暗い光が宿っていた。

8/23/2024, 1:54:14 AM

『愛の反対は憎悪ではない、無関心である』
これはかの有名なマザーテレサの言葉だ。A子はパタンと本を閉じる。毎日少しずつ、何かが削がれていっていると思っていたこの感覚に、まるでマザーから言葉を付けてもらえたような気がした。
その間もB男はスマホから顔を上げず、親指で画面をスライドさせるのに今日も夢中になっている。
慈愛に満ちた彼女の格言が、じんわりと確実にA子の中で波紋を広げていく。何かがすぅっと冷えていくのを感じた。
「……もうここに愛は無いの」
B男がこれを聞いているのかどうかなんて、最早そんなことはどうでも良かった。これからやるべきことに一筋の光が射す。
A子はダンボールを購入しに行くべく、その場でゆっくりと立ち上がった。

8/21/2024, 10:16:44 PM

「二歩進んだらもう記憶が無くなった」
まるで酒呑みみたいな台詞だな、とA子はほんのり笑う。これを素面で言えるのだからある意味凄い、とバレないように小さく溜息をついた。
B男はベッドに散らばる衣服をさっと掻き集めてあっという間に身支度を整える。
じゃあまたとだけ言い残し、昨晩の痕がまだ色濃く残っているのをそのままに、そそくさと扉を開けて飛んで行ってしまった。
忙しい人だから仕方ない、あの人はすぐにどこにでも行っちゃうから、などと独り言ちるも後に残るは搾り取られるような胸の痛みだけ。
嗚呼、私も鳥になって何もかも綺麗さっぱり忘れ去りたい。

8/20/2024, 10:16:04 PM

逢うは別れの始まりって知ってる?
長い髪を風になびかせて、あの時彼女は僕にそう言った。
白いワンピース 大きな鍔の帽子 向日葵がふんわり揺れていたっけ

「おじいさん、ご飯ですよ」
「おお、まだじゃったかの?」

食事を準備してくれて、隣で微笑む白髪の老女。全然知らない人なのに、僕の心が穏やかに凪いでいるのは何故だろう。
目の前の箸らしき物を見るけれど、これは一体どう使えばいいのか。少し逡巡していると、老婆がスプーンをそっと差し出してくれた。
嗚呼、ありがたい。
ぎゅっとそれを握りしめ、茶碗に盛られたばかりの白米にザクッと差し込んだ。

窓から外を見てみると青々とした葉っぱ、山が緑に萌えている。夏の風が優しく吹いた。
嗚呼、今年こそあの子に会いたい

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