まにこ

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「二歩進んだらもう記憶が無くなった」
まるで酒呑みみたいな台詞だな、とA子はほんのり笑う。これを素面で言えるのだからある意味凄い、とバレないように小さく溜息をついた。
B男はベッドに散らばる衣服をさっと掻き集めてあっという間に身支度を整える。
じゃあまたとだけ言い残し、昨晩の痕がまだ色濃く残っているのをそのままに、そそくさと扉を開けて飛んで行ってしまった。
忙しい人だから仕方ない、あの人はすぐにどこにでも行っちゃうから、などと独り言ちるも後に残るは搾り取られるような胸の痛みだけ。
嗚呼、私も鳥になって何もかも綺麗さっぱり忘れ去りたい。

8/21/2024, 10:16:44 PM