まにこ

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8/21/2024, 10:16:44 PM

「二歩進んだらもう記憶が無くなった」
まるで酒呑みみたいな台詞だな、とA子はほんのり笑う。これを素面で言えるのだからある意味凄い、とバレないように小さく溜息をついた。
B男はベッドに散らばる衣服をさっと掻き集めてあっという間に身支度を整える。
じゃあまたとだけ言い残し、昨晩の痕がまだ色濃く残っているのをそのままに、そそくさと扉を開けて飛んで行ってしまった。
忙しい人だから仕方ない、あの人はすぐにどこにでも行っちゃうから、などと独り言ちるも後に残るは搾り取られるような胸の痛みだけ。
嗚呼、私も鳥になって何もかも綺麗さっぱり忘れ去りたい。

8/20/2024, 10:16:04 PM

逢うは別れの始まりって知ってる?
長い髪を風になびかせて、あの時彼女は僕にそう言った。
白いワンピース 大きな鍔の帽子 向日葵がふんわり揺れていたっけ

「おじいさん、ご飯ですよ」
「おお、まだじゃったかの?」

食事を準備してくれて、隣で微笑む白髪の老女。全然知らない人なのに、僕の心が穏やかに凪いでいるのは何故だろう。
目の前の箸らしき物を見るけれど、これは一体どう使えばいいのか。少し逡巡していると、老婆がスプーンをそっと差し出してくれた。
嗚呼、ありがたい。
ぎゅっとそれを握りしめ、茶碗に盛られたばかりの白米にザクッと差し込んだ。

窓から外を見てみると青々とした葉っぱ、山が緑に萌えている。夏の風が優しく吹いた。
嗚呼、今年こそあの子に会いたい

8/19/2024, 10:45:40 PM

私は雨が好きだ。
外に出た途端のムワッと蒸れた匂い、雨粒が葉に落つる音、どことなく静寂、そのどれもが私をたまらなく、胸をきゅるんとさせてくれる。
そう、例えば
君との相合傘 不思議な距離感 二人だけの世界 どうして何も喋らないの

嗚呼、この時間がずっと続けばいいなあなんて
そんなありきたりなことをただただ傘の中で考える

君も同じ気持ちだといいなあ

この空模様みたいに何もかもが曖昧になってどろり溶け合って
いつか雨となってすべてが流れてしまえばいい

8/18/2024, 9:21:22 PM

全てを見られている、とA子は思った。
いつもは口紅を塗り、ファンデーションをはたき、アイラインを引いて、自分がそれを見ている側なのに。
見られている、それは一種の興奮材料にもなり得る。
大好きな彼に背中を預け、ほらよく見てご覧とばかりに映し出された姿に、女にされている己の身体に、A子はうっとりと目を閉じた。

8/18/2024, 12:10:42 AM

くだらないプライド、ひねくれた性格、やめとけと言われる人付き合い
案外形あるものの方が思いきってお別れを切り出せるのかもしれない。
目に見えないけれど無い方がいい物って案外思ったより多くて、そいつを捨てるにはきっと物を捨てる以上に勇気と根性と気合とエトセトラが必要で。
私は断捨離という名の自分との戦いを、日々繰り広げているのであります。

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