今回のお題をみて、真っ先に浮かんだのは、三年前の単車の話。
次男とその悪魔のこと。
大好きで、彼らに会えて、私はその役者さんも好きになった。
前にも言ったFC入るレベルで推してるうちの1人。
ひとりの役者さん、それも当時はまだ18歳の高校生だったその人の演技に魅せられた。
それは例えば花に込めて渡すような
それは例えば宝石に込めて贈るような
それは例えば一杯のカクテルを君に勧めるような
そんな遠回りな言葉。
ずるくて小心者な僕からの精一杯の言葉。
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付き合って初めて貰った赤い薔薇の花束には、白いアザレアの花を返したの。
付き合って暫くして結婚を意識した時に贈られた薔薇の名前を持つ宝石がついた指輪には、涙声での返事。
そのあと貴方にオレンジ色のサードオニキスを着けたネクタイピンを贈ったの。
それからもずっと貴方は折につけて花を、そしてたまに宝石を贈ってくれた。
貴方のその不器用さに少しだけ不満はあったの。
でも貴方の瞳や態度は言葉なんかよりお喋りだったから私はそれで満足してた。
その分、私が言葉で伝えようと思ったの。
最初だけはあなたに合わせたけど、その後は出来るだけ言葉で返したの。
大好き
愛してる
ありがとう
いいコンビでしょう?私たち。
ねぇ、でも貴方。
あのカクテルの意味だけは私まだ分からないでいるの。
どうして貴方はあのとき、私にあのカクテルを贈ったの?
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君と「もう一度素敵な恋を」してみたかったんだ。
別れるつもりなんてないよ
泣きそうな顔をした君に慌てて僕がそう言うまであと少し。
私の一番好きな場所。
自分の部屋のベッドの中。
ベッドの頭の方にはカーテンが引かれた大きな窓。
枕元にはアラームが鳴り響くスマホ。これはまだ1回目の音。
目覚ましは音を変えて3回なるからまだ大丈夫だ。
カーテンを開けるまでは、私だけの世界。
カーテンの向こうはどうなっているんだろう?
もしかしたら、ゾンビが徘徊していて既に私しかいないかもしれない。
もしかしたら、気持ちがいいくらいの澄んだ青空が広がっているかもしれない。
もしかしたら、密かに楽しみにしている隣の家の庭の花が咲いているかもしれない。
もしかしたら、気になるあの人がいるかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら、
カーテンのむこうを想像しながらくすくすわらう。
もしかしたら、を想像してワクワクが止まらなくなるまで私はベッドの中の自分の世界を堪能する。
2回目の音が鳴る。猶予はあと1回。
そうこれはプレゼントの中を想像する小さな子どものような気持ち。
開けてしまえばそこにあるものがなんであれソレが現実。
まだまだ現実を直視したくないなぁ、なんて思いながら、3回目の音と一緒にカーテンを開けた。
あぁ、今日もカーテンの向こうは……。
すれ違う人の顔さえ薄暗い中ではわかりにくくなる
黄昏時。
黄昏時は『誰そ彼』時。
いま隣で話してる君も
いま後ろから声をかけてきた君も
誰そ彼は?
問いかける僕に笑いかける君。
「んーふっふ、さぁさぁ誰だろうねぇ」
そしてアンタも
「誰そ彼はぁ?」
「彼は誰……あぁ、そうだね」
僕は誰なんだろう?
君は誰なんだろう?
黄昏時は誰そ彼時。
黄昏時は逢魔が刻。
さぁさぁ誰だろうなぁ。
僕は君はアンタは
黄昏時に出逢う貴方はだぁれ?
静かな街。
少し古びたアパートの2階。
駅からは歩いて10分、近くにはスーパーがある。
二人で過ごすのには少しだけ狭くて、一人で過ごすには広い部屋。
あの日までは貴方と私の話し声と笑い声が響いていた。
あの日、貴方が出ていった日から静寂が響いた部屋に久しぶりに賑やかな声がする。
一人で寝るには広いセミダブルには、久しぶりに自分以外の人。
気に入ったロフトには自分以外の人の荷物。
洗濯物も冷蔵庫にも人の気配。
静かな部屋
ずっとずっと静かな部屋でしかないと思っていた。
今日からはまた賑やかな部屋になりそうだ。