ほろ

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4/12/2024, 4:49:09 PM

娘が留学して、3年と少し。
初めの頃はいっぱい送られてきていた写真も、今では1ヶ月に2枚。それだけ、あちらに慣れたということなのだと思っていた。

2枚が1枚、1枚が0枚と徐々に減っていき、ついに一切の連絡が途絶えてしまった。電話もメッセージも届かない。手紙ですら宛先に住んでる人がいないと戻ってくる。
嫌な予感がした。昔から、嫌な予感はよく当たった。

留学前に娘と交換したお守りを握りしめ、空を見上げる。娘も同じ空を見ていることを願って。

4/10/2024, 4:44:00 PM

校門前にて、一世一代の告白。
忘れもしない、高校の卒業式と私の恋が同時に終わった日。あれ以来、私は桜が嫌いだ。

今年も、その嫌いな存在が道の両側に所狭しと並んでいる。ああ、春だなぁ。頭の隅で呟く。
「桜なんて、見たくないのに」
春爛漫。私の思いとは裏腹に、春を代表するそれは光の下で輝いていた。

4/9/2024, 11:52:52 AM

校舎裏のゴミ捨て場の横には、桜の木が一本ある。
四月に入って満開になったその下に、金髪ピアスの用務員さんが立っていた。
「久しぶりに会えたね」
「……新学期だってのに、なんで一人で来るんだよ」
「友達いないって知ってるでしょ」
最近、週一のシフトに変更になったらしい用務員さんは、前より一段と目付きが悪くなった。気がする。
頭に桜の花びらを乗せて、あくびを一つ。もう一つ別な仕事を始めると言っていたから、睡眠時間が少ないんだろうな。
「ねえ、用務員さん」
隣に並ぶと、用務員さんは半歩横にズレた。
「何」
「最近ね、話したいことが溜まりに溜まってるんだけど」
わたしは半歩詰める。でも、用務員さんはまた半歩離れていく。
「そういうのは俺じゃなくて同級生とかに言えよ」
「やだ」
「……お前なぁ……」
用務員さんの呆れた顔。溜め息。頭の桜の花びら。
すべてが愛おしく思えて、誰よりもずっと、ずっと好き。それなのに。
「用務員さんじゃなきゃやだ」
「……諦めろ」
今度は二歩、三歩と離れていく。
太陽のように眩しい彼は、やっぱりわたしの手に入らない。それが悔しくて、しゃがみ込んだ。ピンクの地面が、色褪せて見えた。

4/5/2024, 11:49:08 AM

元カレは意外とロマンチストだった。
デートは決まってプラネタリウムか恋愛映画。私の趣味とは違うけど、行きたい場所もなかったし、なんとなくついていってた。
そのせいかもしれないけれど、元カレとのデートの記憶はあまりない。一番好きだったのは告白した瞬間だったと思う。

そんな私でも、未だに覚えていることがある。
最後のデートで行ったプラネタリウム。いつも座る席で眠くなっていた私に、元カレが放った言葉。
「俺たち、合わないね」
いや、それお前が言う? と、眠気が吹っ飛んだ。まだ周りにプラネタリウムを楽しんでいる人がいる中で、当たり前のように言ったのだ。
それからはトントン拍子。坂を転がり落ちるボールが如し。私たちは別れた。

今じゃあ私にも元カレにも想い人がいる。私は割と脈アリだけど、あっちはだいぶ苦労してるらしい。
ちょっとだけ、ざまぁみろと思わなくもない。

4/4/2024, 1:36:09 PM

姉は自己主張が強い人だった。
あれがいい、これにしよ。妹のわたしの意見など聞かないで、姉はよく主導権を握る。わたしが意見を言えば、「こっちがいいよ」と結局姉の思い通りになる。
それが嫌いかと言われたら、そうでもなかった。姉の言うことは割と当たっていたし、そういう自己主張があるのは羨ましいと思っていた。

姉が就職してしばらく経った頃だったと思う。一緒に服を買いに行った時だ。姉が、わたしに意見を聞いてきた。
「どっちがいいと思う?」
初めてのことで混乱した。姉はずっと自分を貫く人だったから、まさか意見を聞かれるなんて思ってなかったのだ。
その頃から、姉はわたしに意見を聞くようになり、「どっちがいい?」から「どれにする?」、果ては「それでいいよ」になった。いつの間にか、姉よりわたしの方が「これにしよ」と言うようになっていた。

姉にどんな心境の変化があったのかは知らない。でも、少なくともわたしは、今の姉が嫌いだ。

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