千歳緑 (※お題一日置きスタイル)

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3/24/2026, 12:30:36 PM

ところにより雨

 桜が咲いていた。
 綺麗だな、と思いながらブラウン管の画面へ目を向ける。
 内地(本州のこと)はもう満開か、と思いきや、よく見ると去年の映像で肩を落とす。
 札幌は朝から雨、いやみぞれである。
 雪じゃなくて花びらが混ざってくれたらいいのに。
 と思いながらカップの中身を空にした。次は何を飲もう。
 暦では春なのに、ここは寒くて暗い。
 部屋の中なのに、ストーブは片付けてしまった。
 テレビでは他所の桜。

 よし。
 被っていた毛布を跳ね除けると、部屋の戸棚からとっておきを取り出した。
 桜のリキュール。塩漬けの本物が入っている。
 紅茶を淹れて、数滴垂らそう。一輪だけの小瓶をテレビの横に並べよう。
 外は雨だけど、待ちきれない花見をしよう。
 機嫌は自分で取らないとね。

 クッキーの皿を用意している間に、画面は過去から現在へと変わっていた。
 向こうも大雨。
 桜雨だった。
 

3/23/2026, 1:08:05 PM

特別な存在



『好きな人が幸せなら、例え結ばれなくても、私も幸せ』

 …なんて、善い子ぶってんじゃないわよ。

『一生不幸で構わない』ぐらい、言ってみなさいよ。

 そしたら、慰めてあげる。



 親友の私が、一生不幸なんて、させてあげないから。

3/22/2026, 2:17:08 PM

バカみたい 

 黙々と文字を綴って、何になる。
 何の役にも立ちはしない。

 黙々と文字を追い続けて、何になる。
 その小説は、人生の為に成りはしない。

 黙々と量産性のない休日を過ごして、何になる。
 丸一日、頭使って疲れただけだ。



 …うるせぇ!!!



 そう叫んで駄作は完成した。

 嗚呼、この瞬間で全てがチャラに成る。
 

3/21/2026, 11:38:11 AM

二人ぼっち

 君といれるなら、二人ぼっちで構わない。
 本気で思っていた。
 世界中の人間が敵になったって、ずっと一緒にいる。

 そう思っていたのに。



 クラッカーが鳴る、行きつけの喫茶店。
 居ると思わなかった友数人が笑っている。
 拍手をBGMに、マスターがケーキを運んできた。
 
 サプライズに惚ける私の隣を恋人、いや養子縁組を申し込んだからもう結婚相手だ、が白百合の造花がついたヴェールを被せてきた。
 お揃いのものを自分も被ると、耳打ちした。

「このケーキ、貴女のお父さんからよ」

 涙が溢れた。
 勘当するって言ってたくせに。



 世界に二人ぼっちで良いなんて、嘘っぱちだ。
 認められる事、祝われる事がこんなに嬉しいなんて。
 二人だけなら、永遠に知らなかったね。










 

3/20/2026, 2:17:11 PM

夢が醒める前に

 嘘を吐いた。
 夢の中で、死んだ母親に。
 母は僕の頭を、病室でよくやってくれたように優しく撫でて言った。

『もう、大丈夫。母さんがいなくても』

 ああ。見守ってくれてたのか。
 心配かけたなぁ。
 だから、うん、と嘘を吐いた。



 大丈夫、なんかじゃないよ。

 貴女を失ったその日から、人はいつか死ぬということ、幸せは永遠じゃないんだということを知ってしまった。
 そんなこと、あと三十年は知りたくなかったよ。
 そうしたら何の迷いもなく幸せになれたのに。
 寝る前に隣にいた人を、離れないよう手を握って、起きたら呼吸を確かめて。
 幸せなはずなのに、いつか失うんだと怖くなるなんてことなかったのに。
 見守ってくれたならまだここにいてよ。
 ずっと側にいるって信じさせてよ。
 貴女のせいで、いつも悲しいんだよ。

 そう言ってやりたかったのに。
 嘘を吐いた。
 心配かけたくない、からじゃない。



 ねぇ母さん。
 夢から醒めても、まだ嘘を吐き続けるよ。
 人はいつか死んでしまうけれど、幸せはいつまでも続かないけど。
 大丈夫じゃないのに、大丈夫って。
 あの日最期に言ったみたいに、強がって生きていくよ。
 
 


 貴女と同じぐらい、愛する人ができたから。

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