詠み人知らず

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8/21/2024, 9:45:46 AM

「じゃあキスして

そしたらちゃんと忘れるから」

その一言で親友は

刺されたような苦悶の表情を見せた

自分はフラれたんだ

唯一無二の親友に

でもタダで終わらせてはやらない

せめて最後に思い出をちょうだい

大事に大事に育ててきた

この恋を

上手に殺してみせるから

だからせめて最後にキスして

死の瞬間まで忘れられないやつをして

それくらい許してよ

◼️さよならを言う前に

8/17/2024, 11:38:01 AM

あの日の衝動を嘘にしたくはないと

彼女が言った

ああ、その通りだと私は思った

理想の未来を掴む為

今この瞬間ただ一点に注がれる

怖いくらいの集中力とその目線

まだ彼女には情熱が宿っている

燃えている、美しくて、羨ましい

時が経っていつかあの日の衝動を忘れても

時代が笑っちゃうくらい大変革を起こしても

花の色がいたずらに移り変わっていったとしても

まだ追い続ける青い炎

大事な大事な出涸らしの夢

◼️いつまでも捨てられないもの

8/17/2024, 3:18:21 AM

見窄らしかった貴方が心を決めた

海の向こうからやってきた王子様に

雷で打たれたかのような衝撃でもって恋をした

王子様の隣に立っても恥ずかしくないように

貴方は夢中で身なりを整え、言葉を覚え、戦った

確かに魔法使いはいたのかもしれない

でも貴方はガラスの靴を

その手を血で染めながら自分で用意した

身体中が痛んでも

偉大なる遊戯場で力の限り踊り切った

見た者の脳に鮮烈に焼き付く命のダンス

今は昔、そろそろ御伽話になってしまいそうな

貴方のシンデレラストーリー

◼️誇らしさ

7/30/2024, 9:59:50 AM

私の命の付属品

幼い頃からいつも母を煩わせた病よ

しばらく姿を隠していたお前は

ある日突然私の胸に帰ってきた

薬をもらっても落ち着くことはなく

先生も不思議そうに首を傾げた

咳一つするごとに涙も一粒落ちる惨めな病よ

傍の最愛の人がいなければ

いつお前に負けてもおかしくはなかった

私の喉に嵐はあるが

そんなものは取るに足らない

命の瀬戸際に最愛の君

私は元の私となって

君と共に生きていく

◼️嵐が来ようとも

7/29/2024, 9:53:26 AM

子供の頃は、毎年母の実家近くの八坂神社のお祭りに行くのが楽しみだった。
大通りが歩行者天国になっていてたくさんの出店が並ぶ活気のある大きなお祭りだった。
昼に御神輿を担いだら夕方早めにお風呂に入り、浴衣を着て人の流れる方へ繰り出していく。
アレが食べたいと出店を指さすと「神様にお参りしてからだよ」と母に嗜められた。
そういうふうに育てられた。

社会に出てから少しして、
職場の同僚が住む町のお祭りに誘われたことがあった。
賑わう駅前で待ち合わせして、揃ってすぐに
じゃあ出店回ろうかと言われた時の違和感。

⁇⁇⁇神様は?

結局その日は最後まで神社へは行かず、出店をブラブラして、最後に同僚オススメのラーメンを食べて帰宅した。
そういうこともあるのか⁇
調べたところ、そのお祭りは神社主体のものではないことが判明する。
名所名跡のない土地で人と人の交流と地域活性化の為に設けられたお祭りだという。
お祀りではない。
フェスティバルである。
たくさん人が集まってハレの賑わいを見せる。
しかしそこに神様はいない。
それは小さなカルチャーショックだったのかもしれない。

◼️お祭り

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