うみ

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12/18/2024, 12:49:19 PM

 ──遠くへの手紙。


 あたたかい寝巻きを買いに行こうと約束しましたね。あなたはずいふん寒がりで、冬の朝がとても苦手だったから。あなたの好みに合わせた濃さのコーヒーを淹れて、どうにかリビングに連れてくるのに苦労しました。


 揃いのマフラーを買おうと言ってくださったのはいつだったでしょうか。みぞれが降っても霜が降りても、いっしょに出かけたかったから。お互いの髪の色や瞳の色と合わせようと言ってみたりして、とても楽しい時間でした。


 雪が降ったらゆきだるまを作りたいと願ったのを覚えていますか。幼い頃は、寒い日に外で遊ぶなんてことは許されなかったから。にんじんを鼻に、バケツを帽子に、枝を手にするんだと知って、とっても驚いたんですよ。



 そちらでは雪は降りますか。寒さも暑さもない、ちょうどいい過ごしやすい気候なんでしょうね。雨も降らないんですか。それなら虹もかからない?

 雪に似た、白い羽が降っているんでしょうか。もしかしたら、今のあなたにもその羽はあるのかもしれませんね。

 あたたかい毛布にくるまっておしゃべりすることも、互いの瞳の色のマフラーを巻いて出かけることも、地面に足跡をつけながらゆきだるまもつくることもできないけれど。
 大丈夫だから、安心して待っていてくださいね。


 何も心配なさらないでください。

 あなたがいなければ生きていけないけれど、あなたがいなくても呼吸をすることはできるのですから。


(冬は一緒に)
 

12/17/2024, 12:52:59 PM

 ──なお、二人とも寝不足である。


「ねえ、サラマンダーは水浴びをすることがあるって聞いたことあるかしら」
「昔、図鑑で読んだような気がします。火を吹いた後、上がりすぎた体温を下げるために川や海に浸かるんですよね」
「そうよ、流石の知識量ねぇ。私、実際に見たことあるのよ」
「火山にでも住んでたんですか……? サラマンダーの生息域はこの辺りではないですけれど」
「違うわよ、はぐれサラマンダーよ」
「あ、なるほど」
「それでね、あいつらって尻尾に火がついてるでしょう」
「ええ」
「そこが水に浸かるのが嫌なのか、尻尾だけ上げて水の中にしゃがみ込む感じで水浴びするのよ。それがなんだかクロコダイルみたいで可愛くて」
「かわいい、ですか」
「おいしそうとも言うわね」
「食べ……?」
「意外といけるわよ、ワニ肉。今度食べさせてあげるわ」
「どんな味なんですか?」
「鶏肉みたいでさっぱりしてるわね」
「じゃあ唐揚げにでもして……」
「あなた、結構食い意地張ってるわよねぇ……」


(とりとめもない話)

12/17/2024, 9:23:24 AM

 ──早く元気になりますように。


(風邪)

 後日加筆します

12/16/2024, 12:52:29 PM

 ──いつまでも待っています。


「おねえさん、だれをまってるの?」

「大切な人を」

「たいせつなひと?」

「大好きな人です」

「さむくないの?」

「ええ、少し寒いですね」

「なかにはいらないの?」

「あの人がいないので」

「さみしいの?」

「とても」

「いつくるの?」

「わかりません」

「なのにまってるの?」

「約束したんですよ」

「どんなやくそく?」

「それは秘密です」

「ふうん」

「あなたも誰かを待っていらっしゃるんですね」

「そう。ともだち」

「どのくらいここに居るんですか?」

「ゆきがふるまで」

「雪が降ったら会えるんですね」

「たぶん、そう」

「楽しみですねぇ」

「あいつ、おそい」

「待ちくたびれちゃいました?」

「ううん。やくそく、だから」

「おなじですね」

「うん、おなじ」

「雪、早く降るといいですね」

「……うん。おねえさんも、はやくあえるといいね」

「ふふ、ありがとうございます」


(雪を待つ)

12/15/2024, 10:26:56 AM

 ──光る地面の上を飛ぶ。


 魔力を持たない者は魔法を使えない。箒で天を舞うこともできない。

 だから、空を飛びながら地上を見るのはひどく新鮮な気分だ。


「寒くないですか?」
「大丈夫だ」

 深い藍の夜空に、彼女のミルクティーのような髪色はよく映える。自分よりずっと細い肩に捕まりながら、北風にかき消されないように声を張って返事をした。

 目を下に向ければ、無数の光が見える。やはり、首都は夜でも明るい。夜のない都市とはよく言ったものだ。ずっと見ていると目が眩む。

「いつもこれほど明るいのか?」
「はい? すみません、風が」
「いつも、こんなに、多くの光が灯っているのか」

 空を飛ぶのは楽しいけれど、互いの声が届きにくいのが欠点だろうか。

「いいえ、感謝祭が近いから、多くの家がランタンを飾っているんです」
「ああ……もうそんな時期か」
 
 そう聞いてから改めて地上を見下ろすと、眩しいだけだった灯りが違うように見える。これら全てに人々の願いが込もっていると思うと、なんだか。

「美しいな……」
「ええ、とても」

 目を大きく開いて、瞬きもせずに願いの象徴を瞳に焼き付ける。空気で乾くのも気にならない。涙が浮かんできてさすがに閉じると、瞼の裏にくっきりと光が浮かんだ。

「もう少し飛びますか?」
「頼む」

 思わず声が弾んでしまう。
 冬の空に、鈴を転がすような笑い声が響いた。


 ああ。本当に、美しい景色だ。



(イルミネーション)

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