うみ

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12/17/2024, 12:52:59 PM

 ──なお、二人とも寝不足である。


「ねえ、サラマンダーは水浴びをすることがあるって聞いたことあるかしら」
「昔、図鑑で読んだような気がします。火を吹いた後、上がりすぎた体温を下げるために川や海に浸かるんですよね」
「そうよ、流石の知識量ねぇ。私、実際に見たことあるのよ」
「火山にでも住んでたんですか……? サラマンダーの生息域はこの辺りではないですけれど」
「違うわよ、はぐれサラマンダーよ」
「あ、なるほど」
「それでね、あいつらって尻尾に火がついてるでしょう」
「ええ」
「そこが水に浸かるのが嫌なのか、尻尾だけ上げて水の中にしゃがみ込む感じで水浴びするのよ。それがなんだかクロコダイルみたいで可愛くて」
「かわいい、ですか」
「おいしそうとも言うわね」
「食べ……?」
「意外といけるわよ、ワニ肉。今度食べさせてあげるわ」
「どんな味なんですか?」
「鶏肉みたいでさっぱりしてるわね」
「じゃあ唐揚げにでもして……」
「あなた、結構食い意地張ってるわよねぇ……」


(とりとめもない話)

12/17/2024, 9:23:24 AM

 ──早く元気になりますように。


(風邪)

 後日加筆します

12/16/2024, 12:52:29 PM

 ──いつまでも待っています。


「おねえさん、だれをまってるの?」

「大切な人を」

「たいせつなひと?」

「大好きな人です」

「さむくないの?」

「ええ、少し寒いですね」

「なかにはいらないの?」

「あの人がいないので」

「さみしいの?」

「とても」

「いつくるの?」

「わかりません」

「なのにまってるの?」

「約束したんですよ」

「どんなやくそく?」

「それは秘密です」

「ふうん」

「あなたも誰かを待っていらっしゃるんですね」

「そう。ともだち」

「どのくらいここに居るんですか?」

「ゆきがふるまで」

「雪が降ったら会えるんですね」

「たぶん、そう」

「楽しみですねぇ」

「あいつ、おそい」

「待ちくたびれちゃいました?」

「ううん。やくそく、だから」

「おなじですね」

「うん、おなじ」

「雪、早く降るといいですね」

「……うん。おねえさんも、はやくあえるといいね」

「ふふ、ありがとうございます」


(雪を待つ)

12/15/2024, 10:26:56 AM

 ──光る地面の上を飛ぶ。


 魔力を持たない者は魔法を使えない。箒で天を舞うこともできない。

 だから、空を飛びながら地上を見るのはひどく新鮮な気分だ。


「寒くないですか?」
「大丈夫だ」

 深い藍の夜空に、彼女のミルクティーのような髪色はよく映える。自分よりずっと細い肩に捕まりながら、北風にかき消されないように声を張って返事をした。

 目を下に向ければ、無数の光が見える。やはり、首都は夜でも明るい。夜のない都市とはよく言ったものだ。ずっと見ていると目が眩む。

「いつもこれほど明るいのか?」
「はい? すみません、風が」
「いつも、こんなに、多くの光が灯っているのか」

 空を飛ぶのは楽しいけれど、互いの声が届きにくいのが欠点だろうか。

「いいえ、感謝祭が近いから、多くの家がランタンを飾っているんです」
「ああ……もうそんな時期か」
 
 そう聞いてから改めて地上を見下ろすと、眩しいだけだった灯りが違うように見える。これら全てに人々の願いが込もっていると思うと、なんだか。

「美しいな……」
「ええ、とても」

 目を大きく開いて、瞬きもせずに願いの象徴を瞳に焼き付ける。空気で乾くのも気にならない。涙が浮かんできてさすがに閉じると、瞼の裏にくっきりと光が浮かんだ。

「もう少し飛びますか?」
「頼む」

 思わず声が弾んでしまう。
 冬の空に、鈴を転がすような笑い声が響いた。


 ああ。本当に、美しい景色だ。



(イルミネーション)

12/14/2024, 10:37:47 AM

 ──もう十分なのに。


 まだ私に愛を注ごうとなさるんですね、あなたは。

 私に返せるものなんてほとんどないのに、等価交換にはならないのに。

 この世界の常識をご存知でしょう?
 与えられた分は返さねばならないのです。

 

 もうやめてください。

 そんなにうつくしい愛をいただいてしまっては、私が世間から後ろ指を指されてしまいます。
 あのひとはあんなに貰ってるのに返していないと。

 
 あなたにはもっと他に相応しい方がいるでしょう?

 私のことなど忘れて、早く新しい愛を見つけてくださいませ。あなたの記憶の隅を陣取ることすら烏滸がましい。早く記憶から消してくださいませ。


 それが。それだけが。
 私が唯一差し出せる、愛とやらなのですから。



(愛を注いで)

 

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