──夜更かししちゃおっか。
パジャマパーティー、というものをしたのだと朝礼前に同僚が話していた。詳しく聞いてみると、なんでも夜に友達を家に招いて(もしくは昼からそのまま)一日泊まるらしい。どうりで寝不足で目をしょぼしょぼさせていたわけだ。
……そういえば、最近友人とあまり話せていない、ような。
「というわけでパジャマパーティーしたいから今日うち来ない?」
「……何故お前は、そういつも唐突なんだ」
ところ変わってお昼どき、魔法省の食堂。書類仕事に忙殺されているらしい友人を捕まえて、二人で野菜たっぷりB定食を手に入れて。水色の瞳に少しの困惑を湛えた相手が席につくや否や声に出した誘いに、呆れた声と視線が返ってきた。ついでにため息までつかれた。
「パジャマパーティー、とはなんだ」
「夜に友達を呼んで話す会だって」
「やりたいのか」
「うん、楽しそう。最近忙しくてあんまり話せてないし」
(眠れないほど)
後日加筆します。
──あいまいな場所に揺蕩う。
(夢と現実)
後日書きます!
──じゃあ、また今度。
手元のコーヒーカップを回しながら、研究所の仕事がどれだけ大変で楽しいかを語っていた友人が、ふと口を閉じる。淡緑の瞳が腕時計に落ちて、つられて自分も手元に目をやった。そろそろ帰らなければいけない時間だ。
外を見れば、陽が橙色に変わりかけている。
「どうする? もうちょっと居る?」
すっかり常連になった喫茶店だから、多少長くいても悪い顔はされない。そう考えての言葉だろう。
「いや、……明日は早いから帰りたい」
「そっか」
友人は名残惜しそうな様子もなく頷いた。すっかり空になったケーキ皿を置いて、同時に席を立つ。
(さよならは言わないで)
加筆します
──朝に眠る。
ゆるゆると眠りから醒めていく。あたたかい寝巻きでも、やはり起きたばかりは肌寒い。少しだけ身を縮めた。
心地よい毛布を振り切って体を起こし、朝の光に目を慣らそうと何度か瞬きをする。カーテンの隙間から差し込んだ朝日が埃を光らせていた。毛布を退けた拍子に舞ったらしい。それとも、そろそろ掃除どきだろうか。
気まぐれに、隣で眠る焦茶色の髪に手を滑らせてみる。自分の髪とは似ても似つかない柔らかさだ。以前に、雨の日は手入れが大変だとぼやいていたのが新鮮だった。両親も姉も自分も、揃って癖のない直毛だから。
友人からは羨ましいと言われるものの、私からすれば当の友人の髪が少しばかり憧れだったりする。多少癖がついていた方が、可愛げがあるような気がして。
それにしてもぐっすりと眠っている。そういえば、昨日は夜勤だったろうか。ならば帰ってきたのはつい数時間前で、今日は昼近くまで寝たままだろう。
……この場合、おはようとおやすみとどちらが正しいのだろう。もう朝だから、挨拶としては「おはよう」のような気がする。ただ相手が眠りについてからさほど時間は経っていない。それなら、ゆっくりと休めるように「おやすみ」でも良いのか。
まあ、こんなことを長々と考えている時点で寝ぼけているのかもしれないが。
決着の付かない脳内での論戦を互いに不戦勝として、静かな寝息を立てる相手の額に唇を落とす。
──おはよう、それからおやすみ。良い夢と良い目覚めを。
崩れた布団を肩まで引き上げてやって、そっとベッドを降りた。
今日は久しぶりに、二人揃っての休日だ。
(光と闇の狭間で)
これで八十作品目です。いつも読んでいただきありがとうございます。
──近すぎても心地良いことを知った。
幼い頃から、他人とのちょうどいい距離を見つけるのが得意だった。あの人は子供が苦手だから近づきすぎないようにする、あの子は兄弟がたくさんいるから多少近くても大丈夫、あの先生はたぶん俺が苦手。
少し成長してからは、周囲のやつらに少しばかり陰口を叩かれた。誰にでも壁を作っている、なんて。
だってそれがお互いのためだろう? 近づきすぎなければ傷つけあうこともない。誰だって被害者にも加害者にもなりたくないはずで、その方法が俺にとっては距離を保つことだった。
変わり始めたのは学園の高等部に入学した頃だ。壁なんて軽々飛び越えてくる友人と、壁の存在を知ってなお話しかけてくれる友人。そして、壁を作りたく無いと思うような相手にも出会ってしまったから。
たぶん、もう無闇に人との距離を取るようなことはないだろう。少なくとも、俺との距離を詰めたいと思ってくれる人間に関しては。
さて、俺の生来の性質すら変えてしまった同居人は、いつ起きるのだろうか。いくら距離がなくなったと言っても無理がないか、膝枕は。絶対寝心地悪いのに爆睡してるし。よっぽど疲れてんのかな。
……まあいいか、これはこれで悪くない。
(距離)