──じゃあ、また今度。
手元のコーヒーカップを回しながら、研究所の仕事がどれだけ大変で楽しいかを語っていた友人が、ふと口を閉じる。淡緑の瞳が腕時計に落ちて、つられて自分も手元に目をやった。そろそろ帰らなければいけない時間だ。
外を見れば、陽が橙色に変わりかけている。
「どうする? もうちょっと居る?」
すっかり常連になった喫茶店だから、多少長くいても悪い顔はされない。そう考えての言葉だろう。
「いや、……明日は早いから帰りたい」
「そっか」
友人は名残惜しそうな様子もなく頷いた。すっかり空になったケーキ皿を置いて、同時に席を立つ。
(さよならは言わないで)
加筆します
12/3/2024, 12:59:34 PM