柳絮

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6/17/2023, 3:32:18 PM

未来


「知ってる? 大昔は自分で性別を選べなかったんだって」
「え、そんなことある?」
「らしいね。肌の色も決まってたって」
「そういうの『生まれつき』って言ってたらしいよ」
「じゃあ飽きたら変えるとかもなし?」
「なし」
「髪も?」
「いや、髪の色は変えられたらしい」
「はー? 謎すぎる。何で髪はよくて肌はダメなん?」
「さあね」
「単純に技術の問題?」
「ふうん……あんま変わんなくね?」
「まあ面積大きいから」
「ぶは、ソコ?」

6/17/2023, 10:49:32 AM

1年前


柱の前に立つ。下敷きを頭に乗せ、固定してその下から抜ける。油性マジックで下敷きの下に線を引く。
新しく書いた線は、その下の線と指2本分離れていた。
目線よりも少し下にも線がある。こちらは赤いマジックで刻まれている。そのうち追いつくんだから混ざってもわかるように、と言っていた。
「あーお兄ちゃん1人でやってる!」
「げ」
「どうせ背伸びてなかったら恥ずかしいからでしょ」
「ちげーし伸びたし」
「私もやって!」

6/15/2023, 10:28:06 AM

好きな本


「マンガ」
「えーかいけつゾロリ?」
「ミステリ」
「プラトン」

「えっプラトンってなに?」
「恐竜?」
「それはプテラノドンだよ」
「ていうかマンガってありなの?」
「ゾロリよりはいいだろ」
「いいじゃんゾロリ!」
「アニメは見てた」
「ミステリは?」
「興味ない」
「ない」
「クイーンなら読んだ」
「海外」
「この前アニメ映画やってたよな」
「それは怪盗クイーン!」
「あれでしょ実写で歌ってた」
「それはボヘミアン・ラプソディ!」

6/14/2023, 2:03:11 PM

あいまいな空


空を見上げると真っ暗だった。
「なんも見えん……」
足元は街灯の光がわずかに当たっているだけだ。絶望的だった。
「なんで月もないんじゃ……」
明日は雨らしいから、もう雲が立ち込めているのかもしれない。
「ばか晴人ー!」
「げっ」
自転車で突っ込んできたのは隣の家の光里だった。
「ほら! おばさんから預かってきた」
「おお!」
左目からコンタクトを取って、差し出されたメガネをかける。見上げると、満点の星空だった。

6/13/2023, 11:22:01 AM

あじさい


雨音が部屋中を満たしている。
義息子は机に向かって手を動かしていた。沈黙が気まずい。
「彼方くん、夕飯何食べたい?」
さり気なく声をかけてみる。が、返事はなかった。心が折れそうだ。再婚して7か月。懐くどころか会話も不可能とは。
「できた」
彼はリビングを出て行った。完全無視。
「……うわ」
机には折り紙の紫陽花が咲いていた。
画用紙とのりを持って彼が戻ってきた。
「えっと、好きなものでいいよ。お義母さんの」
「!」


※あじさいの花言葉……家族、団欒


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