脳裏に焼き付く思い出は、
何故か夏の記憶が多い。
その中でも、
毎年必ず思い出す夏がある。
校舎のベランダ、
人気のない駐車場。
茹だる暑さの中、
あの子と交わした言葉。
その日はとても暑いにもかかわらず
僕らは大人に隠れて
寄り添って話していた。
今思い返せば
あの子はもしかして、
と思うことがある。
まだ幼かった僕は、
あの時の感情に名前がつけられずにいて
その存在に気づくことさえできなかった。
夏は人をおかしくする。
きっとあの日も
暑さでどうかしていたのだろう。
それでも僕は、
一生あの子のことを
あの暑い日のことを
忘れられずにいるのだろう。
『あの日の景色』
約束された未来はないけれど
すべてを変えるようなハプニングにも満ちていない
退屈で不安定な日々のなかで
僕はただ心の赴くままに歩きたい
いつか歌われたように
揺らがぬものがここにあるかは分からないけれど
思うがまま進んだ先で、この道を振り返ったら
積み上げた「僕」が見えてくると思うから
『まだ見ぬ世界へ!』
僕たちに、絶対はない
きっと何かが起きれば
簡単に崩れてしまうような在り方
ただの口約束で共にいるだけ
だからこそ
僕は時々思ってしまうのだ
君がずっと傍にいてくれるための
絶対を求めてしまうのだ
身勝手な願いを
心に留めておくことだけは
許してくれないか
『どこにも行かないで』
次はどこへ行こう、
何をしよう、
そういう話だけで時間が過ぎる
そこで決める内容はさして重要じゃない
決めなきゃ、と言いながら
だらだらと話している時間
それが一番欲しいもの
大袈裟に聞こえるだろうか
常套句と言われるだろうか
それでも、本当なのだ
一緒にいられれば、それで良いんだ
『君と一緒に』
光がどうとか、
眩しい人だとか、
そういったことは思ったことがない。
人は光に例えられない。
君だってそうだ。
君も人に過ぎないし、眩しくもない。
それでも君に会えた時、
僕の世界は一気に照らされる。
ただ愛おしさと慈しみに包まれる時間。
いつまでも続いて欲しいと願う心地よい日常。
そして、それでも終わりが来てしまい、
次を心待ちにする間隙。
君自身は光でないのに
君と会うことは
僕にとって日の出なのだ。
『日の出』