海の底に、1人の少女が沈んだ。
200年前のことである。
青いドレスを身に纏い、沈んだ。
まるで不思議の国のアリスが穴の中へと
落ちていくように、ゆっくりと。
そのように、安らかならば良いのだが。
彼女の名前は知られていない
今や、彼女は魚の住処となっている。
誰も憐れまなかったが、魚たちは、
知る由もなく、住んでいる。
海が彼女を受け入れたとでも言うのだろうか。
それは彼女自身すらも、知ることはない。
君に会いたくて来た
本当の気持ちを伝えたいけど、
もっとお酒がいる
「見ての通り、日記です。
火薬臭いし、なんなら焦げてるでしょ。
もっといい品物がありますよ。」
その日記は、何年も前からガラクタ入れ同然の
木箱に入っている。
ある日古物商の男はふとそれを手に取った。
"10月6日 (水) 快晴"
晴れ渡っている。
今日で開戦から5年目
退屈。明日も書く。
そしてページを捲ると、ただの白紙である。
「思ったとおりだ。つまらない。」
閉ざされた日記は、また木箱に戻された。
木枯らしが吹き、色褪せた落ち葉が舞う。
落ち葉と共に、虫の死骸も舞っているように見えた。
「こいつらは何を成したのだろうか。」
老人は、ベンチで1人呟いた。
木枯らしが強く吹きつける。
「何を成したか。
これで私は満足だろうか?」
木枯らしが冬の訪れを告げる。
同時に、いくつかの灯火を吹き消していく
「いや、満足なのかもしれない」
「そうだ。あまり我々を待たせるな。」
いつの間にか、目の前には黒スーツの男が立っていた
「行くとしよう。」
冬が訪れる。
昼下がり。
二人の男が、コーヒー片手にこう話す。
「美しさというのは、不変的だ。」
「そうだろうか。」
「百人一首は知っているだろう。
それに自然を詠んだ和歌があるんだ。
現代人と平安の人々で、美しさの基準というのは変わらないのだよ。」
「どうにも、不変という言葉はしっくりこない。」
「話は変わるがね、不変なんてものはないと思うんだ。」
「ほう」
「的外れかもしれないが、ビザンツ帝国。
あの1000年以上続いた帝国でさえ、
最後はオスマンに滅ぼされたじゃないか。
そしてそのオスマンすらも滅びた。」
「またそれか」
「つまり、何事も不変ではないのさ。」
「やけに論点がズレたな。
そもそも最初は"美しさ"なんてテーマじゃなかった
こんな話し合いじゃ意味がない。」
「いいじゃないか。すべての話に意味を追い求めるのも疲れる。何も考えずに話をしたり、話を書くのは
楽しいんだ。」
「全く、何時間話した?話が間延びしてきている気がするよ。」
「それはそうと、"人一倍頑張る"という言葉は変だと思ったことはないか?だって、"一倍"だろ?
"二倍"の方が正しいじゃないか。」
「確実に話が間延びしてるよ。おい、コーヒーが冷めるぞ。そういえば、このブラジル産の豆なんだが...」
「もう少し意味の無い話を続けるのも良いかもな。」