(題目しらず)
私の人生は
8割運:2割実力
あの条件下で
この人生はあり得ない
ことごとく対峙した
人生の分岐点を振り返って
今もそう思う
でももし
運を実力で引き寄せている
というならば…
私の人生は
8割実力:2割運
そう言えるのかもしれない
(題目しらず)
「シュートだ…!くる!」
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高校2年生
サッカー部
ポジション:キーパー
弱小校で部員もぎりぎり足りてるくらい。
ほんとはシュートを決めれるポジションにつきたいのに、比較的上手いからという理由でディフェンスのポジションを任され、今日はキーパーをしている。
キーパーなんて、最もしたくないポジションだった。
キーパーをしていた先輩が、親から勉学に専念しろと言われた結果退部し、次のキーパーが決まるまでディフェンスのメンバーでローテーションして対応していた。
そして、今日の試合が自分の番。
好きでもないサッカーをして、好きでもないポジションを任されて、したくもない任務を割り当てられる。
もちろん試合には集中するが、複雑な気持ちだった。
ディフェンスが頑張ってくれているおかげで、今のところ対処が難しいシュートは来ていない。
下手なミスをしないよう、慌てずボールを止めていく。
試合が中盤に差し掛かった頃、一番のピンチが訪れた。
相手チームで一番うまい選手がシュートに持ち込もうとしているのが見えた。これは最大限に集中しないとヤバい…!
どの方角にシュートが打たれても対処できるように、その場で小刻みにジャンプする。
中学でソフトテニスをしていた時に身につけた技術だった。
そしてその時がきた。
「シュートだ…!くる!」
どこかに衝撃があり我にかえる。
衝撃があった方を振り返りつつ見上げると、自分の右腕とサッカーボール、そしてゴールポストの角が見えた。
ボールはゆっくりとゴールポストのぎりぎり上を越えていく。何が起きているのか理解できなかった。
慌てて着地して前を向くと、サッカーのプレイヤーが見える。そこでやっと試合中であることを思い出した。
チームメイトが喜びの表情を向けてくれ、ベンチでは後輩たちが歓喜のあまり飛び跳ねている。
自分が成し遂げたことが分かり、思わず顔がほころんだ。
試合は結局負けてしまったが、ベンチに帰ってからも、スーパーセーブだと称えられた。
とてもうれしかった。
みんなが口々に「ジャンプがすごく高かった」と言ってくれた。
…おかしい。
私は幅跳びは得意なものの、垂直跳びは高く跳べない。
件のスーパーセーブも、シュートを打たれる前と止めた後の記憶はあるものの、肝心な部分の記憶がなかった。
どんなに思い出そうとしても、プツリと記憶が途切れていて、思い出すことができない…。
あのシュートを止めた人物は…
いったい誰だったのだろうか…。
本来生きるはずではなかった時を生きている。
本当ならあそこで死んでいたはず…。
その思いを抱えながら生きることは
強い喜びを感じさせてくれることもあれば
深い悲しみとなることもある…。
あの時、
死んでおくべきだったのだろうか…?
夜風にあたり月を眺める
なかなか会えないほど離れて暮らす
あの人を想いながら
月が綺麗に見える夜
互いに報告し合ったあの人を
「月が綺麗ですね」なんて言わない
ただ、見える月を報告するだけ
「今日は満月だよ」
「うっすらと西に月が見えるよ」
「きれいに三日月。左下が欠けてる」
ただそれだけの報告を
言われて互いに空を見上げる
必ずしも同じ月が見えるわけではない
雲しか見えない夜もある
それでも、同じ月を眺める
あの人の幸せを願う
そんな優しい目をしながら
「今週の天気です。
最新のシミュレーションによると、今週いっぱいは雨が降り続くとのことです。」
今週も雨か。
人類は目覚ましい進歩を遂げ、かつて予報と呼ばれたものは、予知と言っていいほど確実なものとなった。
雨と言えば雨が降り、晴れと言えば晴れ渡る。
人々は次第に信じ、今ではほとんど全ての人が信じきっている。
かつて、未知なるウイルスが蔓延した時、死者が多く出るという世界的権威の言葉どおり、世界中で死者が多く発生し世界規模での大混乱となった。
ワクチンなるものが世に出て、それによって弱毒化するという噂がたつと、信じる人も増えていき次第に弱毒化していった。
自分には関係のないところで努力する専門家たちのおかげで、未来は予知可能な世界へと変貌していったのだ。
かつて、天気予報と呼ばれていた時代、人々はその精度に半信半疑だったようだ。実際、母に聞いた話だと気象予報士なる人が「明日は晴れるでしょう」と言っても、どうせ外れると皆が言い、実際に外れていたようだ。
今では考えられない、不便な世界だと感じた。
現在、人類を脅かしているのは異常気象に伴う大災害だ。
過去に「異常気象は加速する」という説が唱えられ、世界的権威がこぞって賛同した。そして、そのとおりの世界となっている。
シミュレーションの結果、世界が崩壊すると出れば、人々はそれを信じ、実際に崩壊するはずだ。
『人間とは哀れなものよ。己らにその力が備わっているとも知らず、人の言葉を信じ、そして自らを幸にも不幸にもする。
飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこの事だな…。』