(題目しらず)
聞き慣れた声で目を覚ます…
朝の目覚ましは小鳥のさえずり
小粋なことを地球はしてくる
絶望の世界…、そこでいったい何が起こるのか。
朝、目を覚ます。
体操の曲にもある、希望の朝だ。
だが…、そんなものはどこにもない。
虚ろな目で前を見る。
あるはずの色が消え、灰色の世界。
色を色と認識できない世界だ。
前に一歩踏み出すにも何の感情もない。
ただ、足を前に動かすだけ。
それだけだ。
それは時に重く、時に苦しく、
時に心を握りつぶそうとしてくる。
次第に世界から切り離される。
読んでいた文字は空へと逃げていき
気づくと何もない世界にぽつんと1人立たされる。
それに気づいて振り出しに戻るが、
結局同じことを繰り返すばかり。
やがて物語の世界も歪んでいき、
文字が文字と踊りだす。
人の苦しみも素知らぬ顔で、
それはそれは楽しそうに、
大小に変化(へんげ)して代わる代わる踊りだす。
それはまるでフォークダンスのように。
そして同時にメリーゴーランドのように。
立っているのもつらい世界で、
座ることも許されない。
どんなに歩みが遅くとも、
前に進むことを余儀なくされる。
何故ならば、立ち止まると途端に
すぐ背後まで迫り来る漆黒の闇に
飲み込まれてしまうからだ。
自らを死の世界へと葬り去る漆黒の闇に。
誰もいない荒野の世界を
月さえも消えた闇の世界を
ただひたすらに前へ前へと歩を進めていく。
崖が目の前に立ち塞がろうが
イバラに深く傷つけられようが
とにかく前へ前へと進まなければならない。
この苦しみがいつまで続くのか。
終わりの見えない荒野を前に
人はふと、思ってしまうことがある。
もう自分は立ち止まってしまってもよいのではないか?
いっそのこと漆黒の闇に飛び込んでしまった方が苦しむことなく済むのではないか?
自分を支えていたはずの
最後の砦のはずの自分の心が
悪魔のように囁きかける。
つい、後ろを見据えてしまう。
そこには、刻々と迫り来る漆黒の闇がある。
わずかばかりの間逡巡し
諦めて前へと向き直り歩を進める。
一歩、また一歩と。
虚ろな目の奥に微かな光をともして。
(題目しらず)
私はよく悪夢を見る。
自分ではどうしようもない危機に陥っている時は、ありがたいことにだいたい夢だ。
だいたいと書いたが、現実ではそんな場面に出くわしてないので、全てが夢だ。
あまりにも悪夢を見すぎて、夢の中である考えをするようになった。
「こんな悪いこと、今まで夢の中でしか起こらなかった。だからこれも、きっと夢だ!」
もちろん夢という自覚はない。
現実として起こっている。
夢であれという気持ちを込めた願いに近い。
そして、夢から覚めた時に思う。
「ほんとに夢だった…」と。
しかしこの悪夢、あまりにも現実的すぎてこう思うようにもなった。。
「これはきつい…。だけどこれは、さすがに夢じゃないよな…。なんとかして立ち向かわないと…!」
夢なのである。
もう悪夢には、ほとほと愛想が尽きた。
私が処方されている精神薬は
眠気が強いことで有名だ。
晩ご飯後2時間以上空けて
夜寝る前に服薬する。
1日に1回服薬するだけでいい。
快適だ。
ただし、朝はなかなか起きられない。
なんとか起きて、朝ごはんを食べる。
と、そこで目が覚める。
「なんだ…夢か…」
と改めて起き直してまた朝食を摂る。
そして、目が覚める…。
今日はすでに5回は朝食を食べている。
その全てが夢だ…。
我ながら笑える。
遅刻ぎりぎりで今度こそ起きた私は
急いでスーツに着替えて
朝食も摂らず慌てて家から飛び出した。
太らないといいけれど…。
くそぅ…。
むかつく…。
むかつく…!
最後まで本気で頑張らなかった自分に…!
過去の自分に…!
頑張ろうにも頑張れないじゃないかよ…。
頑張れる時はとっくに過ぎちまったんだから…。
過去の葛藤も、怒りも、全て分かるから
責めることもできないけど…。
やれること、諦めずにしてほしかった…。
今は見ることのできない分岐、見てみたかった。
そうすれば、もしかしたら、
この怒りを感じずに済んだかもしれないのに…。
くそぅ……!
強いだと…?
強いだと…!?
どれだけ強かったかもわからない!
自分の実力さえわからないんだから
分かるわけがないよなぁ!?
なに冷静に考えてる!
「先を考えると…」なんて冷静になったふりして。
悔しさをバネにもしないで。
大切な人に、不甲斐ない姿見して…。
それが最後だったんだぞ…。
その次はなかった…。
同じこと…、繰り返してるんじゃない…!!