とらた とらお

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10/13/2023, 10:20:05 AM

わくわく
背もたれ周りの機械を
ついキラキラとした目で見回してしまった。

「まるで子供みたいだね 笑」
歯科医のおじちゃんに笑われる。

やってしまった…。
いい歳になった大人がまるで子供のように…。
身体は老け込み始めたが
精神からはまだ子供が抜けきっていない。

たしかに子供の頃、
ことごとく「忘れた」を武器に
子ども心を分かってくれない大人達を見て、
「絶対に子ども心を忘れない大人になるぞ!」
と誓いはした。

誓いはしたが…、本当に忘れないとは。

時折恥ずかしくなってしまう。
だが、ま、子供達には誇れる大人になれたのかもしれない。
そう思って恥ずかしさを忘れることにした。

8/31/2023, 10:56:22 AM

(題目しらず)


闇のなかを電車が走る

架道橋から眺めるそれは

窓から漏れた微かな光(ひ)が

横に流れる線路を照らし

おぼろ電車と揺れる線路が

ゆらゆらぼんと流れていく

淡く儚いその光景を

過ぎ去りしあとも眺めゆく

8/16/2023, 10:35:54 AM

「ぼくがお母さんを助けてあげる!」
母にとっては重くもない買い物かごを
半ば奪い取るように両手で抱え上げる。

母のお礼が耳に届かないほど、
それは一生懸命に全身の力を振り絞って
買い物かごを持ち上げ歩いた。

ただただ、役に立ちたいと。
誇らしい息子でありたいという気持ちで。

そんなことも忘れ育ち。
何の役にもたたず、
ただただそこにいるだけの人間に成り下がった。

家のことなぞ母がやってくれると…。

そんな月日を過ごしていたところに、
母が余命宣告を受けた。
唐突だった。

何をしてやれば母のためになるのか。
初めて本気で考えた。
だが悔しいことに何も思い浮かばない。

これまでも一瞬だけ、何かしようとは考えた。
でもやることなすこと他人よりレベルが低い。
それに気づいた瞬間、諦めた。

自分が役に立てると思えなかった。
誇らしい息子でいたい。
誇らしさで、満たされたいのに…。

…しかたがない!
時間がないんだ。

3/14/2023, 2:45:43 PM

久しぶりに見たその顔は
とても穏やかなものだった

いつもどこか疲れた表情をしていたのに
憑き物が落ちたような
清々しさ?いや、晴れやかさ?
いや、安らかさを感じさせる顔をしていた

久しぶりに見るどこまでも真っ直ぐな
けれども暖かみのある優しい目

その瞳にあてられて
こっちまで心穏やかになる

安堵した空気が
二人を包んで取り囲む

永遠に続くわけもない
けれどその時間を切望するでもなく
ただただ夢中で見つめ続けた
互いのその安らかな瞳を

3/13/2023, 4:45:40 PM

私があそこで出会わなければ
最愛の人を不幸にしなかったかもしれない

私があのとき運命に抗わなければ
出会わなくてすんだかもしれない
そのかわりこの世にもいない

出会った時から思っていた
犬になって出会いたかったと
忠犬としてそばで支えたかった
人である必要はなかった
ただ、主の幸せを、笑顔を、癒しを
傍にいて守りたかった
ただ、それだけだった

何度も伝えたんだけどね
毎回断られてしまった
人でなきゃできないことがあるから
犬になってはダメなんだとさ

はてさて、どうしたものか

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