(題目しらず)
「シュートだ…!くる!」
----------
高校2年生
サッカー部
ポジション:キーパー
弱小校で部員もぎりぎり足りてるくらい。
ほんとはシュートを決めれるポジションにつきたいのに、比較的上手いからという理由でディフェンスのポジションを任され、今日はキーパーをしている。
キーパーなんて、最もしたくないポジションだった。
キーパーをしていた先輩が、親から勉学に専念しろと言われた結果退部し、次のキーパーが決まるまでディフェンスのメンバーでローテーションして対応していた。
そして、今日の試合が自分の番。
好きでもないサッカーをして、好きでもないポジションを任されて、したくもない任務を割り当てられる。
もちろん試合には集中するが、複雑な気持ちだった。
ディフェンスが頑張ってくれているおかげで、今のところ対処が難しいシュートは来ていない。
下手なミスをしないよう、慌てずボールを止めていく。
試合が中盤に差し掛かった頃、一番のピンチが訪れた。
相手チームで一番うまい選手がシュートに持ち込もうとしているのが見えた。これは最大限に集中しないとヤバい…!
どの方角にシュートが打たれても対処できるように、その場で小刻みにジャンプする。
中学でソフトテニスをしていた時に身につけた技術だった。
そしてその時がきた。
「シュートだ…!くる!」
どこかに衝撃があり我にかえる。
衝撃があった方を振り返りつつ見上げると、自分の右腕とサッカーボール、そしてゴールポストの角が見えた。
ボールはゆっくりとゴールポストのぎりぎり上を越えていく。何が起きているのか理解できなかった。
慌てて着地して前を向くと、サッカーのプレイヤーが見える。そこでやっと試合中であることを思い出した。
チームメイトが喜びの表情を向けてくれ、ベンチでは後輩たちが歓喜のあまり飛び跳ねている。
自分が成し遂げたことが分かり、思わず顔がほころんだ。
試合は結局負けてしまったが、ベンチに帰ってからも、スーパーセーブだと称えられた。
とてもうれしかった。
みんなが口々に「ジャンプがすごく高かった」と言ってくれた。
…おかしい。
私は幅跳びは得意なものの、垂直跳びは高く跳べない。
件のスーパーセーブも、シュートを打たれる前と止めた後の記憶はあるものの、肝心な部分の記憶がなかった。
どんなに思い出そうとしても、プツリと記憶が途切れていて、思い出すことができない…。
あのシュートを止めた人物は…
いったい誰だったのだろうか…。
5/29/2024, 2:40:11 PM