明日への光
明日への光だあ? はあ。またその手のやつが出てきたか。あのな。光は単に光だし、明日はほっといてもくるぜ? 俺やおまえが明日に行けるかどうかは別な話だが。そういう問題じゃない? いや困るなあ。俺その手の抽象的なテツガクは不得意なんだよ。光はなんかの喩えと考えろって? はあ。わかった。光は速い。とにかく速い。一番速い。なんでだと思う? 速くなけりゃ光じゃなくなるからさ。そんな最速の光だって明日には届かない。明日を照らすのは明日の光だ。
いやもちろん、光が希望の喩えだってことくらい俺にもわかるよ? 明日への光について語る前に明日の光のための燃料作っとけ。
☆☆☆
いまいちだけどこのままにしておきます。この語り手のおっちゃんキャラがわりと気に入ったので。「星になる」のお題のときの語り手と同じおっちゃんだな、たぶん。
星になる
星になりたいだと? いやあ久しぶりにバカがいたな。愛すべきバカではあるが。今すぐ星になりたいなら、ロケットで打ち上げて大気圏外から落ちてくりゃ流れ星にはなれるが、死んじまうからお勧めできないな。死んでから星になるのでよきゃ、ガス状星雲に遺体をぶち込むのがいいと思う。一億年以内には星になれる。でもな、あと五十億年経てば俺たち漏れなく自動的に星になるぜ。太陽が膨張して地球を呑み込むからな。そんなに待ちたくない? じゃひとついいことを教えてやろう。俺たちはもともと星だったし、今も星の一部なんだ。カール・セーガンも言ってるだろ、"We are made of starstuff."ってさ。俺たちは星になる必要がない。すでに星だから。
遠い鐘の音
朝六時の鐘の音が遠く聞こえる。あれは山の上の寺から聞こえてくる鐘の音だ。僕はこどものころからあの音を聴くと不安になった。でも僕以外の人はあの鐘の音を聴くと安心する、癒されると口にするのだ。なぜ僕はあの音を聴くととても嫌な気持ちになり落ち着かなくなるのか。なぜ僕以外の人はあれを聴いて落ち着くのか。
長じて僕は、人が落ち着く周波数というものがあるのを知った。432Hz、ドレミでいうところのラより少し低い。僕はその音を聴いて頭を裏返して掻きむしりたくなるほどの不快感を覚えた。あなたには心地よいあの音が僕には悪夢だ。鐘の音がまだ遠く聞こえる。僕があれを叩き壊しにいかないことを神に…いやあそこは寺だから仏か、とにかく感謝してほしい。
僕は僕を癒す音を探すつもりだ。その音が全世界の誰にとっても不快な音だとしても。
☆☆☆
おまけ独白
こういう場所で「偽善者ども」みたいに書く人を見つけて頭をなでなでしたくなった。愛いやつ愛いやつ。私はこういう場所でわざわざこんなもの書いて少しの♡がつくと喜ぶ俗物なんだけど、でも、ネガティブなものを書いてるつもりはない。
スノー
僕の名はスノー。今日からそういうことになった。なぜスノーなのか知らない。まあもう名前なんかどうでもいい。そのどうでもいい名をドアの前で名乗る。
「はじめまして、ご主人様、スノーと申します」
ドアから顔を出した老女は僕をぎろりと睨み、
「スノーの癖に白くないのね、今から髪を真っ白に漂白なさい」
ああ、やっぱりろくでもない日々が続くんだ。
夜空を越えて
そうよ、あたしは宇宙を夢見てた。はるか遠い銀河、彼方にあるもの。嘘じゃないわ。宇宙こそがあたしの夢。散光星雲から聞こえてくる名状しがたき声に呼ばれてあたしはこれを作り上げた。あなたを騙してたわけじゃないわ。あたしはあなたが好きよ。少なくとも顔はね。だからあなたの中身を散光星雲に住むあのひとと交換するの。あのひとはすてきよ。宇宙はあんなふうに冒涜的な夢想に満ちあふれているべきなのだわ。夜空を越えてやってくるあのひとに早く会いたい!
☆☆☆
2日連続クトゥルフやっちゃった…