君からのLINE
君からのLINEだ
ここでも読めるなんて
以前はうれしかった
でもいまは
迷惑だとか
鬱陶しいとか
君を嫌いになったとか
そういうんじゃなくてさ
死んでるんだよ
死んでる人間と
LINEやってはいけない
もうやめてくれ
ぼくが死んでから
もう半年経つんだよ
命が燃え尽きるまで
「命が燃え尽きるまで」というタイトルだけがトップからおりてきた。おれの上司怒る怒る。
「そもそも命ってなに? 燃え尽きるまでってなに? 溶鉱炉に浸かって親指立てたやつには命なんかなかったよね! つまんないテーマのVRMMOは作るべきじゃないわ!」
叫ぶ叫ぶすげーうるせー。これがおれの上司かと思うと燃え尽きたいほどに嘆かわしい。でも言ってることには理がある。
「まず命を定義するのよ。ウイルスは生命でないと仮定して、微生物がこの世界に生きている限り主人公のライフは尽きない前提でやってみたい。そして結末はふたつ。宇宙の生命体をすべて根絶するか、宇宙の果まで命でいっぱいにするか。それ以外は敗北というゲーム、それなら作ってみたいわ。どうかしら」
簡単に言いやがるなあ、それを作るのはおれっちだぜ。おれの命が燃え尽きそうだ。
夜明け前
夕暮れどきは、たそがれ、すなわち「誰でしょうあれは?」と言いたくなる時分であるという。君はあの時刻をトワイライトと呼んで、薄皮一枚向こう側の薄明界に強い興味を抱いた。
君の研究は本当に面白かったよ、薄明界に住まうものを妖怪だと君が断言したときは腹を抱えて笑ったっけ。ずっとあんなふうに笑っていたかったなあ。
しかし君は気づいてしまった。夕暮れの薄明界など子供の悪戯のようなものに過ぎない。真の薄明界への入口は夜明け前にあるのだ。かわたれ、すなわち「あれは誰でしょう?」と訊ねたくなる夜明けがやってくるその直前の闇に。
知ってしまった君を生かしてはおけない。
本気の恋
このお題で書けるわけがないでしょう。と思ったけど書けないのも悔しいのでなんか書きました。変態で気持ち悪いしグロ描写もありますので、そういうのが苦手な方は読まずにスルー推奨です。それでもいい人だけスクロールしましょう。というか今気づいたけどこの作品が100作品目…こんなのでいいのか。私らしいのでいいのだたぶん。(グロと気持ち悪いの増量しました
本気か本気でないか誰が決めるのでしょうか。恋か恋でないかは恋すると称する本人が決めたらいいのでしょうか。たかが恋のせいでバカみたいに泣いたり笑ったりした友人たちを思い出して、わたしは呆れました。また、本気の恋だと言ってきた連中のねっとりじっとりした視線を思い出して、わたしは身震いしました。
ええ、本気の恋なんてありゃしないと思ってたんですよ。ビルから突然落ちてきた鉄骨の下敷きになって死にかけているあなたを見るまでは。口からも鼻からも血がたれて、潰れた内臓から悪臭が漂ってきました。あなたの顔は土気色で、白目をむいて、あなたはそれでも生きていて、生きていたいとでも言うようにわたしに手を伸ばしました。わたしはその手を取りませんでした。だってこれは本気の恋です。かなってはいけないんです、そういう種類の本気なのです。誰かが呼んだ救急車がくるまで、わたしはあなたの顔をずっと見ていました。
わたしの本気の恋はそれで終わりました。いえ、終わらせないといけなかったんです。本気の恋なんて何度もあっちゃいけない。いま目前にいる、内臓をさらけだした血まみれの男、わたしが殺したこの男はあなたではない。あなたはもういない。あれは一回きりの奇跡でした。
カレンダー
そこはステンドグラスの光線に彩られた空間で神秘的な感じがした。黒塗りの洋服ダンスみたいな観音開きの扉を開けると、その中には12本のロープが張られ、ロープにはそれぞれ12の球が通っており、その球に触れると空間に輝く文字が浮かび上がった。ぼくは口をあけてぽかんとそれを見た。
ぼくは異世界転移してこの世界にやってきた。神様に言語チートをもらったのはよいのだけど、この世界の人、親指2本にその他の指4本、つまり両手合計12本指でさ、当然12進法なわけ。頭の中で数え直せばなんとかいけるけど、全然算数無双できないんだ。だから商家勤めとか無理でお決まりの冒険者ってやつになった。指が足りないながらもがんばって、季節が夏から秋に変わって、ふと、ぼくがここに来てから何日経ったんだろうと思ったんだ。で、この世界の暦を教えてほしいと冒険者ギルド受付の猫耳モフモフにお願いしたところ、この部屋に連れてこられたってわけだ。
「これが我がギルドのカレンダーです。すばらしいでしょう?」
確かになんか神々しいしすばらしい。美しい。でもどうやって使うんだよ。このホログラムみたいなの魔法だよな? ぼくにも使えるの? 異なりすぎだよこの異世界。もっと異ならない異世界にきたかったよホントに。