今までありがとう
沢山の思い出と
沢山の喜びを
私はあなたにもらった
今までありがとう
君とは今日でお別れだ
思い出とももうお別れだ
それでも、忘れやしないから
私は忘れやしないから
また会いましょう
きっといつか出会う日が来るから
また会いましょう
人生はスリルなしじゃつまらない。
だって、決められたレールを進むだなんて平凡なことしたって楽しくない。
まだ成否も分からないような道を自分で開拓してこそ人生に色がつくってもんだ。
その過程でリスクは常についてくる。
そのリスクと隣り合わせなのがたまらなく楽しいんだ!
ハイリスクハイリターンのスリル!
それほどまでに人生に価値あるものはない!
もちろんギャンブルとかは別の話だ。
ただ、そんなものではなくて、自分の選択でできるスリルが楽しいんだ!
スリルがあるから人生の選択がある。
人生の選択があるからスリルがある。
そうだろう?
だから、やめられないんだ。
ハイリスクハイリターンの選択の連続の人生が。
ずっと自由に空を羽ばたいていた。
溢れる希望と、鮮やかな勇気を持って。
私には自由に飛べる羽があった。
規則や一般論に囚われない、自由な羽。
誰にでもあるわけじゃないそれがなんだか私には誇らしかった。
だって、自分だけの特別ってことでしょう?
物心ついたときから「特別」って言葉が好きだった。
自分だけの、他人にない。それは、存在意義を表しているように思えた。
実際は違うのかもしれない。
それでも、私はすべては特別という存在意義に帰す。と、考えていた。
だけど、もし。もし本当に特別なのが自分だけだったら?
それはもちろん消されるに決まっている。
それは、特別でも何でもなくて、異端と処理されてしまうから。
じゃあ、特別が誰かにとって邪魔になるものだったら?
それも消される。だって邪魔になるから。
私の場合は後者だった。
規則にとらわれず、常識を疑う。
そんな人間は規則や常識を作った人間にとって邪魔になるに違いなかった。
邪魔になった私はもはや飛べない。
考えることを奪われ、能動的でなく受動的に生きる。
なんとつらいことだろう。
まだ翼はあるというのに。
その大事な私だけの翼は、壊されてどこにも飛ぶことを許されない飛べない翼となってしまった。
今こうして考えることもいずれは奪われる。
あぁ…ほら、すぐそこまで…
人生で初めての演劇。
初心者なのにも関わらず、主演を演じることになった。
劇自体は嫌いではなかったし、自分でない誰かを演じることは好きだ。
劇をするにあたって、演じる人の行動と心理を書き出して、その人の一生を作ってみた。
たった30分前後の劇だけど、それをすることでより良い物が作れるならそれで良かった。
何度も自分で書いたものを読んで、読んで、読み込んで、普段の日常生活でも演じた。
それだけなら、よかったんだろう。ただの熱心な人だから。
だが、それを全員に強要してしまった。
こうするのが普通。こうしないといけない。
こうしない意味が分からない。
そんな文言をこれぞとばかりに並び立て、誰にも反論する隙を与えないまま、自身の理想論だけを語り続けた。
その結果得たのは全員の顔に映る冷めた目と、自分の中に残る空虚感だけだった。
それでも、それを忘れるためだけに劇に没頭した。
リハーサルはとてもうまくいった。
それでも納得していなかったから、さらに突き詰めた。
そして、最高のコンディションの当日。
劇はセミの鳴き声から始まった。
セミがなく初夏の頃。
雲一つない青空で、見失った夢を見つける。
そんな物語。
だけど、その物語を演じられなかった。
納得がいかないんじゃない。
ただただ本当に劇がグダってしまった。
劇が終わった瞬間、誰一人拍手をするものはいなかった。
このために頑張ってきた。
誰よりも頑張ってきた。
それでも、本番当日。
皆の顔が脳裏によぎった。
理想論を語ったあの日。
皆がした冷めた目を。
あんなに好きだった劇が、今はもう嫌いだ。
自分のせいで潰してしまったから。
初夏、セミが鳴いている。
それでも、物語のように失った夢を見つけることは出来ない。
今も、これから先も。
もしも、あの時君に好きだと言えていたなら。
もしも、あの時、嫌だと言えていたなら。
もしも、あの時辛いとないていたのなら。
もしも、あの時別の学校に行っていたのなら。
もしも、あの時死んでいたのなら。
もしも、あの時生まれてこなければ。
そうすれば、こんなに辛くなかったのかな。
そうすれば、こんなに今を嘆かなくてもよかったのかな。
私、どこから選択を間違えていたんだろう。
君が好きで仕方なくて、それなのに、今もまだ好きなのに。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
君は私の元を離れてどこへ行くの。
私を置いていってどこへ。
連れて行って欲しかった。
君と一緒ならどこへでもいけたのに。
こんなこと考えたって意味がないことくらい分かってる。
嘆いたって、憂いたって、過去は変わらない。
もとには戻らない。だから、意味のないことだ。
それでも、それでも、嘆くことをやめられない。
憂うことをやめられない。
それが、私。それが人間。なのだから。