かなで

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12/7/2022, 11:05:35 AM

部屋の片隅で


息子が2歳くらいの時の話。
彼はかくれんぼが大好きでよくねだられたものだ。ただ小さい子あるあるだが隠れ方がバレバレである。
隠れ場所はたいていカーテンの裏で藁の納豆のようになっているか、部屋の隅でお気に入りのタオルケットを被り大福のようになってるかのどちらかだった。
私と夫のミッションはいかにこのバレバレのかくれんぼを長引かせ楽しめるかにあるのだ。
もういいよーの声を合図にミッション開始!
まずすぐには近寄らない。違う場所を探すふりをして少しずつ近づくことでワクワク感をあげていくのだ。
「ここだ!あれ?」「みーつけた!あれ?いないぞ~」というセリフも効果的だ。隠れている息子はすでにクスクス笑い出していてどう見てもバレている。息子。修行が足りないぞ。それでは忍者にはなれない。(当時は忍者に憧れていたのです)
次はいよいよ接近戦だ。すぐにはカーテンやタオルケットをめくらずに上から形を確かめるようにモミモミするのだ。
「あれ?これなんだ?膨らんでるぞー?」と言いモミモミ攻撃。
もうケラケラ笑ってるがカーテン、タオルケットをめくるまでは試合終了ではないのだ。攻撃に耐えられなくなって息子が出てきたらフィニッシュ。よし勝った!勝ったってなんだ?
ただね…これワンステージじゃないんですよ…一日何公演も。しかも好評につきロングラン公演でしたね。
ということを思い出したので、さっきゲーム中の息子をいきなりくすぐったら「ヴギャア!」と低い声で驚いてました。
はい。叱られました。母は満足です。

12/3/2022, 11:34:38 AM

さよならはいわないで

息子が幼稚園年少の時の話。
入園して初めてできたお友達は女の子でした。
息子はおしゃべりでちょっとおちゃらけ系。対象的にその子は引っ込み思案だけどいつもニコニコしていて、2人はいつも一緒でした。
幼稚園の先生から、今日も手を繋いで遊んでましたよ、と言われるくらい。
ある日のこと。送迎バスから降りた息子が笑顔もなくトボトボと降りてきました。喧嘩 でもしたかと思って家に入ると、玄関でワンワンと泣き出したのです。
何が起きたかわからなくて話を聞くと、聞き取れたのは
「〇〇ちゃんがさよならするんだって」でした。
パパの転勤で今日で幼稚園を辞めることになったと先生が帰りに告げたようなのです。
バスでも隣に座ったのに、なにも話せなくてそのまま家に着いてしまったみたいです。
少し経って、その女の子のお母さんから電話がありました。その女の子も家に帰ってからずっと泣いていて、きちんとさよならできなかったとずっと言ってるんです…電話で話させてもいいですか?との事でしたのですぐ息子にかわりました。
うん。うん。楽しかったね。また遊ぼうね。お手紙かくよ。うん。バイバイ。またね。
グッと涙をこらえながら話している姿。
電話を切った後、ちゃんと話せた?と聞くとコクリとうなずきました。
息子にとって初めてのさよならでした。


11/30/2022, 10:17:56 AM

泣かないで

今の私にこのお題は辛いなぁ。
ここ数日仕事関係で凹むことが多かったのに
追い討ちをかけるかのように
包丁でガッツリ指を切ってしまい
皮膚科受診…ガーゼ交換する度に出血が
止まらない。うっかりがすぎるぞ自分。
でも看護師だって怪我くらいするよ。人間だもの。
朝から家族が発熱でコロナ検査のために受診。陰性だったのが幸いだけど。
ここまで気持ちが落ちると浮上できないなぁ。
こんな時に思い出す句があります。
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ」石川啄木
上手くいかない自分。周りがすごく素敵にみえて羨ましくて悲しい。明日は花でも買ってこよう。少しは気持ちが浮上するかな。

11/29/2022, 10:58:09 AM

冬のはじまり

季節の変わり目は鼻で感じることが多い。
春は土の、夏は青草の、秋は落ち葉の匂い。冬は匂いというよりは鼻奥の閉まるような感覚で冬の訪れに気づく。
冬が始まると一番楽しみだったのは霜柱だ。あのキラキラした氷の細かい柱が朝日に光りとても綺麗。そっと霜柱を手で持ち日に透かしてみるといつかテレビで観たローマの宮殿みたいだ。
鑑賞したあとはいよいよお楽しみの時間。霜柱を踏みしめるのだ。
やったことがある人はわかると思うが、あの霜柱を踏んだ時のサクサクとした靴底に伝わる感覚がたまらない。脇道のまだ踏まれていない霜柱を踏みながら歩くのは、冷え込みはじめた通学路のお楽しみだった。
今は舗装がしっかりされてる道になったので見る機会は減ってしまったが、玄関を開けて鼻にツンとした空気を感じると、あの頃のワクワクした気持ちが蘇る。
さあ今日も一日が始まる。

11/24/2022, 11:00:05 PM

セーター

私の母の話。
母は編み物が趣味でなんでも編めるひとです。
子供の頃、私と弟にクリスマスツリーの下にプレゼントがある絵柄のセーターを編んでくれました。
プレゼントのリボンの色を刺繍する時、私はどうしても金色の糸でやって欲しくてワガママを言った記憶があります。
キラキラしたクリスマスプレゼントのリボンのイメージがあったからです。
母は、金色?ないから買いに行こうと一緒にお店に行って。糸のたくさんある棚から探す時のワクワクした気持ちを覚えています。
セーターが出来上がった時、プレゼントの金の糸が嬉しくて何度も撫でて、友達に金のリボンの刺繍を自慢したっけ。
振り返るとね、金の糸ももちろん嬉しかったのだけど、私の話を聞いてくれて、希望を受け入れてもらったことの全てが嬉しかったんだと思うんです。小さい弟がどうしても優先で、お姉ちゃんだからと言われていた時期だったので。
いまでも編み物は続いていて、毛糸の靴下は雑貨屋さんに卸しているそうな。趣味の域を超えてるよ、母。

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