哀愁をそそる
私の中では秋の公園
小さい頃近くの公園で遊んで
だんだん人数が減っていく
最後の方になると1人になりたくなくて
家に帰りたくなる
まだ遊びたい
でも日も暮れるのが早くなってきて
なにかに追われるように
家路に向かう足も
呼吸も白く速くなる
夏ならまだまだ遊びたくて
そうそうに始まった手持ち花火の匂いとか
盆踊りの町内会の集まりの音とか
楽しい夕暮れなのに
秋というだけで同じ公園が帰り道が
急に小さく狭く感じたのだ
そして家に着いてドアを開けると
その名前のつけられない
息苦しいような狭さが
暖かさでほどけていく
今思えばあの閉塞が哀愁と
よべるものなのかもしれない
かなで
眠りにつく前に
眠りにつく前に思い出すのは
谷川俊太郎さんの朝のリレーという
詩です。
世界中の朝をみんなでリレーを
している、みんなで地球を守ってる
みたいな詩なのですが
わたしが送った朝を誰が
受け取ってくれている
そう思うとなんだかくすぐったい
そして目覚めた時
誰かから朝を受け取っているのだ
よし!今日も地球を守るぞ
なんてたいそれたことは
出来ないけど
ここにいる意味を今日も
ふんわり考える
眠れない夜は
わたしが夜の警備を残業していると
思うようにしようかしらね
理想郷
理想郷って
「ここは理想郷だ!」って
感じるのかな
最高だ、と思っていても
慣れてくると不満は出る気が
するし
そしたら一気に色褪せるのかな
それとも
あの時いた場所は理想郷だったなと
思い返すのだろうか
私は寝る前に「今日は何事もなく、
家族が元気で自分も元気。いい一日
だった」と思って眠るようにしている
ということはわたしが眠りに落ちる
瞬間が理想郷になるのかな
かなで
懐かしく思うこと
故郷の実家から
学校までの通学路
春は草の匂いと
少しの不安と期待感
新しい少し大きな制服
夏は青い空と
袖についた絵の具の
鮮やかさに気づき笑う
秋は乾いた風と
落ち葉を踏みしめる
音とローファーの底に伝わる感覚
冬は鼻奥に感じる締めつけと
握りしめる缶のココアの熱
息の白さすら景色となる
故郷に帰ったら歩いてみようかな
きっともう同じ感覚では
ないけれど
道のどこかにあの頃の
思い出が転がっているのかも
しれない
かなで
もうひとつの物語
私の一番古い記憶。
それは保育園の床下の空間に
友達と3人で探検ごっこをしたこと。
床が持ち上がるところがあり
そこを外して中に入った。
暗くてパイプだらけだったけど
ジャングルジムみたいだった
先に光が差し込み出口だ!と
進んだら仁王立ちした先生が
すごい顔で待っていた
先生からしてみたら
お昼寝していたはずの
子供たちがいないわ
床板はどうやったのかズレてるわ
出てきた子供たちは
ホコリまみれだわ
なかなかの惨状だったろうな
迎えに来た母が
先生に対して
頭を何度も下げていた場面を
覚えてる。
大人にとっては散々な出来事
でも子供にとっては
すごい冒険の出来事
視点が変われば
物語はいくつも存在する
かなで