「わ〜、蝶々がいるよ!!!」
元気だなぁ〜、なんて考えながら口元に缶を近づける。
珈琲のいい匂いが私の心を落ち着かせた。
今日は息子と近所の公園に来ている。
桜が咲いていて春をより一層感じさせる。
そう、春。
春と言えば何を連想する?
桜。
花粉。
虫?
虫は夏?
何でもいい。
とにかく、この時期になると大っ嫌いな昆虫たちが姿を現す。
特に羽の生えた虫は大っ嫌いだ。
勿論全ての昆虫?虫は無理なのだ。
一番嫌いなのは蜘蛛。
ま、そんな事はどうでもいい。
それより、今まさにピンチなのだ。
この公園には蝶が沢山いる。
今取るべき行動はなんだろう。
1.息子を置いて逃げる
2.息子も連れて逃げる
3.手当たり次第殺す(蝶)
4.悲鳴を上げる
5.失神する
6.夫に助けを求める
7.誰かと話して気を紛らわせる
こんなもんか。
無し、ってのを上げてく。
まず、1、息子を置いて逃げる。
そもそも無し。
3、手当たり次第殺す(蝶)。
常識的に考えて無し。
仮に常識が無かったとしても無し。
近づくことすら出来ないから。
4、悲鳴を上げる。
変な噂が立ちそう。
子供達の前では出来ない。
5、失神する。
失神してる間に口とかに入られる、近づかれる恐れがある。
6、夫に助けを求める。
今更だが、夫は今この場にいない。
今日だってじゃんけんで負けたから来ただけである。
夫も無理なのだ。
昆虫?虫が。
7、誰かと話して気を紛らわせる。
紛らわせられない。
で、結果的に残ったのは…2、息子も連れて逃げる。
無理。
あんな楽しそうに蝶を追いかけてる息子を止めるなんて…。
あ、それだ。
「おーい!!ちょっとこっち戻ってきて〜」
「なに?ママ、どうかしたの?」
「あんまり蝶を虐めちゃ駄目でしょ?追いかけるのも程々にね」
「はーい」
………。
やっちゃった。
やっべー。
もう帰るよ、とか言って帰るよ予定だったのに。
次追いかけ回し始めたらすぐ声かけて帰ろう。
………。
そうだった。
素直な子だからなぁ〜。
一度注意された事は中々やらないんだよなぁ。
良い事なんだけど……。
良い事なんだけどなぁ。
よし!!!
覚悟を決めるぞ。
………。
「おーい!ちょっ…こっち来て」
「?追いかけてないよ???」
「実はね、ママ、ね?あ、蝶、とか、ちょっとちょ~っとだけ苦手なんだ。ほんとにほんっとにちょっっと何だけどね?」
「………帰る?明日はパパで良いよ」
「そうしよっか…。ごめんね」
「良いよ。明日はパパに長くいてもらうから」
ごめんなさい、夫。
その時、飲みかけの珈琲が入った缶に何の偶然か蝶が入った。
「ね、あの缶の中に蝶がいると思うから取ってくれない?」
「いいよ!!」
とってもらった時、蝶は珈琲に浸かってしまったのか、飛べなくなっていました。
その蝶は白と黒の羽を持つモンシロチョウでした。
申し訳ありません、モンシロチョウ。
本当にごめんなさい。
どうか、呪わないで。
ーモンシロチョウー
追記:どうでもいい内容なので見なくても良いですが書きたかったので書きます。
先、言っときます。(書いときます?)
実話じゃないです。
でも、蝶とか蜘蛛とかが嫌いというか、怖いというか、はホントです。
今度のお題が実話を書けるお題だったら書こうと思ってます。
私がずっと感じて来た事です。
というか今更ですが蝶って茶色と白みたいに書いた方が良かったですかね?
ま、いいです。
次も追記、書けたら書こうと思ってます。
読んでくれてありがとうございました。
「お前、自殺したいか?」
低く、どうにも不安になる声にあわせ変な質問。
驚いて少し固まってしまった。
「…どちら様でしょう」
やっと発した一言だった。
だが、目の前の男はそんな質問を無視して言った。
「先に俺が聞いた。自殺したいか?」
目深に被った黒いフードから冷めた視線を感じる。
「したくありません」
「そうか、なら俺に殺されるか自殺するか」
は?と聞き返したくなった。
私は死にたくない。
が、男の質問には死ぬ以外の選択は無いのだ。
まぁ、どうせただの戯言。
耳を貸す必要は無い。
「そうですね…どうせなら殺して欲しいです」
冗談だった。
私の経験では、この手の冗談が通じる為には相手も冗談で無くてはいけない。
「分かった。一年後に殺しに来る、準備しておけ」
それが冗談だったのかはあと一年経たないと分からない。
しかしどうにも不安になっている私がいた。
まるで医者に余命宣告を受けたような。
そんな感じ。
大きな不安が私に襲いかかる。
それから数日。
「先生、私って何処か悪くなっていませんか?」
もう、藁にも縋りたかった。
あの男が私を病気にする事は出来ないと思っていた。
なら何らかの方法で私になにかの病気がある事を知った。
その病気のせいで私が自殺するか死ぬかを見抜いた。
男が私を殺しに来ると言ったのは嘘だろう。
病気で死ぬ事に対して自分が殺したのだと思いたかった、思わせたかったのかもしれない。
死神のように。
「いえ、至って正常ですよ。むしろ良くなっています。このままいけば一年後くらいには退院できますよ」
発病するのはもう少し先なのかもしれない。
そんなこんなで、残り一ヶ月をきった。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
死ぬ?
なんで?
何の病気も出ていない。
私じゃ無くて他の誰かが。
何で私なんだ。
あの男のせいだ。
あいつのせいで私は死ぬんだ。
殺す殺す殺す。
死ね。
あいつが居なくなれば私は死なない。
毎日呪った。
それが効果を発揮したのかは分からない。
まだ寒い季節だった。
吐く息は白く、雪が積もっている。
早く春が訪れてほしい。
春が来れば私は死なない。
何故一ヶ月とはこんなにも長いのだ。
嫌いな冬が一層嫌いになった。
残り5日。
その日は夢にあの男が出てきた。
「あと5日」
その日を堺に毎夜必ず男が夢に現れる。
眠らないようにしても何故か必ず眠ってしまう。
「あと1日」
「死神ごっこの何が楽しい」
意味もない質問を投げかけた。
「死神‘ごっこ’じゃ無い。死神だ」
「馬鹿げたことを」
「明日がお前の命日だ。12時にお前を迎えに行く」
死にたくない死にたくない。
それだけが胸に残った。
「先生、何故皐月(さつき)さんは亡くなってしまったんでしょうか…」
「それが、分からないんです。順調に回復していたし昨日は退院日だったのに」
「そう言えば、昨日が退院予定日でしたっけ」
「…」
「偶然ですかね?」
「何がですか?」
「あの病室のことです。前にもあそこの病室で退院予定日に亡くなった方がおられました」
「…偶然ですよ」
「…その声辞めてくれませんか?すみません、勝手だとは思うんですがその声を聞いてるとどうにも不安になるんです」
ー一年後ー
明日世界が終わるなら。
例えばそれはどんなときだろう。
巨大隕石が落ちてきたら?
きっと世界は終わるだろう。
いや、落ちてくることがあり得ない?
もしも落ちてきたとしたら、どうなってしまうか考えてみようか。
地球が滅亡?
生物だけ絶滅?
沢山の国が無くなる?
それとも一か国だけ?
その一か国のうちの半分くらい?
一割くらい?
その国の小さな村がなくなるくらい?
そう言えば、世界ってどれくらいの規模を指してるんだろう。
見方によって色々変わって色々考えられるよね。
明日世界が終わるなら。
例えば他にどんなときだろう。
環境によって起こるかも。
戦争によって起こるかも。
他にはどんな事があるかな?
これを読んでくれてる人も考えてみてね。
明日世界が終わるなら。
例えば僕は何をするだろう。
好きな物いっぱい食べたいな。
もう食べきれないってくらい沢山食べて幸せに包まれながら死んでいくのかな。
それとも、何も考えられなくなっていて恐怖を抱かず死んでいくのか。
楽しい事もいっぱいしたいな。
大好きなゲーム、友達と遊ぶ、なにかを見ているのでもいいかも。
家族と一緒に死ぬのもいいな。
不安なんて抱かないかも。
そしたら、多分、結果的には幸せって言えるかも。
明日世界が終わるなら。
例えば僕は何を考えるのだろうか。
まだ生きていたかった。
幸せだなぁ。
怖い。
楽に死ねて嬉しいな。
色んな事をしていて良かった。
なんかこういうのって楽しいな。
他にも色々。
喜怒哀楽。
どんな感情が生まれるのだろう。
お腹すいた、眠たい、大人になって、もしくは今までもっとあんな事やこんな事をしとけば良かった、したかった。
なんて考えられないかもしれない。
明日世界が終わるなら。
終わってほしくないだなんて変な事をほざくかもね。
怒って、悲しんで、嬉しくなって。
あー、でも僕。
明日世界が終わるなら。
多分、飼ってるペットと一緒に死にたい。
ま、一番良いのは、その時に僕が一番好きな人と死ぬことかな。
親でも、友達でも、恋人でも、ペットでも。
明日世界が終わるなら。
ー明日世界が終わるならー
「可愛い〜」
「本当だ、見てく?」
「うん」
カランコロン
綺麗な音を鳴らしながらドアが開いた。
その奥にカップルと思しき男女が楽しそうに入っていくのが見えた。
「ね、ここ入ってみない?」
そう言ったのは友達の片山 はる。
はるが見ているのはペットショップだった。
「ん」
「ありがとう」
はるは笑いながらドアを押した。
「こっち来て」
連れてこられたのは犬のコーナーだった。
「ここ?」
「そう、どう?」
「?」
「飼うんだったら蓮(れん)に飼ってもらいたいし」
「(買う?)それは良いけど…飼うのか」
「何で?折角来たんだし飼いたいじゃん」
俺が心配しているのは世話のことだ。
週一くらいではるの部屋に上がらせてもらっているが、正直とても汚い。
部屋の掃除もまともに出来ない人間が果たして生き物を飼えるのだろうか。
「そっか」
「で、選んで?」
「………あの犬は?」
「うん!良い!じゃ、飼ってね」
「ん、何万くらい?」
「お金は私が払うよ」
「は?」
「ん?」
「いや、お前が先に買えって言っただろ」
「え?」
「それに、金欠じゃ無かったのか?」
「流石に、飼ってもらううえにお金まで払ってもらうわけにはいかないでしょ」
「………なんて言った?俺が飼うって言ったのか?」
「うん、さっき聞いたじゃん。そしたら良いよって」
「は、………んん?……。ん゙〜………。ま、良いか……」
「うん!えっと……………ニ、二十万ちょっと……れ、連。やっぱり…」
「ん?」
「あ、や、なんでもないデス」
なんてやり取りをしてから実に一ヶ月。
はるは毎日俺の家に上がる。
その度に何かしらを持ってくるのだが。
その何かしらが犬用のご飯。
料理なんて全くしていなかったのに、テンを迎えいれる前の日から少しずつ料理の勉強を始めたという。
そして、驚くべき事にはるの部屋に上がると少しだけ、ほんの少しだけだが綺麗になっていた。
あ、テンと言うのははるが名付けた犬の名前。
何故かテンが俺よりはるに懐いているのが少し羨ましい。
少しずつ変わり始めたはる。
毎日金欠なはるだったが、最近は貯金箱にお金を貯めている。
その貯金箱は俺の家にあってはるが毎日百円を入れていく。
「ありがとう」
テンにお礼を言ってみたものの答えてくれる訳もなかった。
代わりに答えたのはそばにいたはる。
「えー、別に〜。テン」
「ワン」
「私、君に出逢って変われたと思う。ありがとう」
そっちか〜。
ー君と出逢ってー
「キッモ」
「ちょっと~、聞こえるって」
「キャハハ」
煩い。
「うっわ!きったねぇ!!机、触っちゃったんだけど〜」
「こっち来んなよ!」
「百回は洗わないと駄目だな」
「なすりつけてくんなぁ〜」
「早く手洗い行けよw」
煩い。
「おはよ~」
「え?無視?ひっどぉ〜」
「話しかけてやってるのになー」
「仕方ないよ、耳聞こえないんじゃね?」
「耳鼻科行ったらぁ〜?」
煩い。
「くっさ」
「確かに、何の匂い〜?」
「こいつじゃね?」
「あ~、洗ってあげようよ」
「誰が服脱がすんだよ」
「別に服脱がさなくても良くね?」
煩い。
「待って、めっちゃびちゃびちゃ何だけど?」
「可哀想ぉ」
「良いじゃん、綺麗になったし」
「あはは!」
煩い。
「大丈夫?」
「心配するとか、マジ天使じゃん」
「流石!」
「ありがとw」
煩い。
「お前ら!席つけ〜」
「はーい」
「…………じゃあ、HRもすんだし、1限体育だから着替えとけよ、あと、白井(しらい)は放課後職員室な」
「かわいそ(ボソッ)」
「ザマァ(ボソッ)」
煩い。
「つーか気になってたんだけど、美月(みつき)って白井の事嫌いじゃないっしょ?」
「何で?」
「えー?何となくみたいな?で、ぶっちゃけどうなの?」
「…興味ない人に好きとか嫌いとか無い」
「………チッ」
「良かったね〜!!!美月は白井の事嫌いじゃないって!!」
「マ?ちょっと引くんですけどー」
「それなー?」
「人に自分の好き嫌いを押し付ける方がキモくね?普通に引く」
「何それ、琉花(るか)美月の味方なの?」
「味方もなにも、気に入らなかっただけなんだけどww」
煩い。
「ほんと最悪〜」
「どした?」
「ペア白井何だけど」
「うっわぁー、ま、がんばw」
「そうだ!美月変わってよ〜」
「良いよ」
「やった~!!」
煩い。
「何あの走り方、ぶりっ子じゃん」
「可愛くねぇ〜、豚じゃん」
「言えてる〜」
煩い。
「よく学校来れるよね」
煩い。
「死んでくださーい」
煩い。
「あのな、先生は白井の事を思って」
煩い。
「お前なんか産まなきゃ良かった!!!!」
……。
「大丈夫?」
ありがとう。
「無理しないでね」
ありがとう。
「休んで良いんだよ?」
ありがとう。
「可愛い」
ありがとう。
「大好き」
ありがとう。
「奈々(なな)は間違ってなかった」
ありがとう。
「生まれてきてくれてありがとう」
……。
「死なないでね」
うん。
ー耳を澄ますとー