manbou

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3/15/2026, 12:07:44 PM


嫌だ嫌だ、見たくない自分。星が溢れ出す。
頭が重くて限界まで重くなった頭から、星が溢れ出す。
溢れ出す希望のアイディア。
もう止まるのことはできないね。明らかになった。
やめよう。今いるところから先へ。溢れ出す星を輝かすために。今いる星は捨てよう。

「これであってる?」

「それはどうかな?」

「やっぱりもう少し考えなきゃダメ?」

クククとあなたが笑う。

「どこへ行っても同じさ。学ぶことは巡ってくる。それなら、どこへ行ってもいい」

「そっか。それなら、どうせならちょっとでも楽しいところがいーね」

「そうだね。ちょっとでも楽しそうなところへ行くのもいいかもね」

 本当に…この人はそう思ってるんだろうか?

「ところで、あなたはだれ?」

「いつかわかるさ」

「それっていつ?」

「君が辿り着いた先の星でわかるよ」

黙ってうなづく。今は黙って、部屋の片付けでもしよう。

『星が溢れる』

12/3/2025, 2:34:36 PM

軽やかなステップ、君の足音。
こちょこちょの魔法をかけてあげよう。
楽しさでいっぱいの…ピンクの嬉しさ、明日はないかもだけど、今日だけはいっぱいいっぱい抱いてあげたい。
ふわふわでうきうきで優しい。そんな子どもの頃の世界をほんの少しだけ垣間見て…。

 ふと、寂しく思った。

寒い今日という日に特別な甘いシフォンケーキができる。

「明日からはなしにしなくちゃ」

「なんで?」

「だめなんだ。そういう甘いのは、…大人はだめ」

「大人はだめ?」

「大人はコーヒーゼリーでいなくちゃ」

「コーヒーゼリー?それってどんな味?」

「苦いの。苦いんだけど、甘さも知ってるの。でもほとんど苦くて、甘くないの」

「それって美味しいの?」

「美味しいよ」

「どこが?」

「苦いの、苦い世界にまみれて…また甘い味を思い出そうと、苦い味を舌でつぶすのが美味しいの」

 君の瞳がこちらをうつす。

「今日のおやつは?」

「シフォンケーキ、あとはハートの砂糖」

「はい、じゃあ一個あげる」

「ありがとう」

 手に落ちた小さなハート。口に入れると昔に閉じ込めたhappyな味がした。

 特別寒い今日だけ…思い出させてくれた。

『冬の足音』

11/28/2025, 2:58:24 PM

クリスマスツリーを出した日、ふと窓を見ると一面に霜が広がっていた。指でチョンッと窓を触るとそこだけ向こう側が見える。指でmerry Xmasと書いた。

「まだだけど…」

Merry Xmasの字が赤く染まった。

「ん?」

見上げると霜の向こう側にぼんやりと大きな人影。コンコンとノックされる。

「………」

 黙っていると、今度はMerry Xmasの字から人の目が覗いてきた。

 びっくりして後ずさった。

「Merry Xmas」

 聞こえなかったが、確かにドアの向こうでそう言っている。

 ゆっくりと、本当にゆっくりとドアの鍵を開けた。そろそろと窓をひく。

「メリー…クリスマス?」

 そう問いかける。

「Merry Xmas」

 自信満々にそう返される。

「あの、クリスマスはまだ…」

 そう言うと、髭で隠れた口がoh…と呟いた。

 クリスマスツリーを出した日、慌てん坊のサンタクロースがうちに来た。

「トナカイ…乗る?」

 いきなりの日本語で驚いたが、さして不自然でもなかった。

 サンタはトナカイに乗る?と言ったが、実際にはソリに座る。サンタの隣で街を見下ろす。

「どおりで、まだXmasっポくないなと思った」

サンタがそう呟く。

「街はもうクリスマス一色ですけどね」

 11月からXmasになる国、日本。

「当日とはチガウよ」

 チッチっと指を振られる。

「今日はどうして間違ったの?」

「うーん、今年はWhite Xmasが良くて」

「ああ、 Xmas当日に雪が降るんですよね」

「そう、それでそればっか思ってたから、ユキが降って慌てて出てきチャった」

 手を上向きに広げる。一ミリにも満たない白がポツポツと手に降りる。雪とも言えないほどのテンテン。

「もうちょっと…降りて欲しいですね」

サンタクロースがうんうんとうなづく。

「もっと雪が降ると街が真っ白になって、ソリからの景色が絶景なんだよネ」

「あの、一つ疑問なんですけど…」

「ナニ?」

「どうしてうちに?私は大人ですけど。それに夜中でもないし…なんなら朝だし…」

「早くプレゼント渡したくて…でも今日はどの家も霜で中が見えなくて、そこでMerry Xmasの文字を見て、この家から入ってみようと思ったんだ」

「なるほど……サンタは今日がはじめて?」

「ワリとマエから」

「ですよね」

 家の前まで下ろしてもらったとき、プレゼントをもらった。

「スノードーム…」

「アリガチだよね」

「いえ、クリスマス同日もこのスノードームみたいに雪が降るといいですね」

スノードームを降ると真っ白になる。少しすると真っ赤なサンタが見えはじめる。

「White Xmasになるよう、お祈りしときます」

「アリガト」

 サンタを見送る。サンタがソリに乗ったとき、ふと…サンタがこう言った。

「今日はfrost Xmasだね」

「え?…あ、はい」

「Merry Xmas」

サンタが手を振る。手を振り返した。

「メリー…クリスマス」

サンタが帰る。家に入り、スマホでfrostと検索する。英語は苦手だ…いや、全くできない」

「ああ、霜か…確かに。今日はfrost Xmasだ」

 クリスマスツリーの飾りをつけていく。てっぺんの星をつけたとき

「いや、だから今日は Xmasじゃないんだって…」

そう1人で突っ込んだあと、窓に描いたMerry Xmasの文字から外を覗き込む。まだ…雪は降っていない。

 そのとき、もう会えないであろうあわてんぼうサンタのことをとても恋しく思った。


『霜降る朝』

10/20/2025, 12:57:46 PM

桜の花びらなような優しい微笑みのあなたに、僕はなんと言えばいいのだろうか。ずっと好きだと言う思いを胸にひめて君の幸せを唄けば、ちょっと泣いちゃうけど、悲しくないね。

雨に打たれても笑顔でいよう。雨上がりの輝きを知っているから何も慌てることはない。
手のひらから桜がこぼれ落ちるように優しく君の行き先の安心を願うよ

ずっと一緒ではないけど悲しくないね。
君に唄を捧げば、何年も何千年も響いていくから。

最後に…ありがとう。いつか、ありがとうを感じるときまで、僕は君が送ってくれた愛に気づかないかもしれない。だけど信じていてください。


『君が紡ぐ唄』

10/19/2025, 1:22:50 PM

霧の中で、1匹の狼に出会った。狼は腹を空かせており
私を見るなり食わせてくれと言ってきた。

「随分と直球なのね」

「今すぐ食いたい」

私は横たわった。

「どうぞ」

「いいのか?」

狼は目を丸くした。その表情は随分と滑稽だった。

「いいの。思う存分召し上がれ」

狼の鼻がくんくん私の匂いを嗅ぐ。

「足だけにしようか?」

遠慮がちに狼がそう言った。

「嫌よ。足がなくなったら歩けないし、そんな姿で生きていきたいとは思わないわ」

「では腕は?」

「一緒よ、なに?あなた私を残す気なの?」

ムッとして狼を睨む。

「いや、少し申し訳なくてな」

「何を言っているの?私も今までお肉をたくさん食べてきたわ。お互い様じゃない」

「だが、ここを歩くものは皆、大変な苦労をしてここまで登ってきている」

「そうね、それなりにきつかったわ。でももう終われると思うと清々しいわ。私、あなたに助けられたわ」

 狼は少女の言葉に訝しげに首を傾けた。

「だが、あと少しで目的地につけるぞ。ここは狭間だ。腕を1本くれるだけでいい。足があれば目的地まで歩ける」

 少女は狼にあっかんべーをした。

「嫌よ。私もう歩けないの。光の国へは行かないわ」

「そうか…光の国で会いたいものがいたのではないのか?」

「大事なのは光の国へ着くことではなかったの。愛したい人はいたけど、もういいの」

狼はますます、不思議そうに少女を見つめた。

「それで良いのか?その愛したい人に会えなくても。そのために苦労をしてここまできたのだろう?」

 少女ははっきりとこう言った。

「いいえ、違うわ。私はあなたに会うためにここまできたのよ」

「私に会うために?」

霧が少女と狼を包む。

「ええ、はじめは光の国で私を待っている人と抱きしめあった後、光の国の力でこの不治の病を治して、その人と一緒に生きようと思ってたの」

「光の国は不思議な力があるからな。私がもしお前の片方の腕を食べても光の国に行けば、また腕が生えてくるぞ?」

 少女は苦笑いした。

「言ったでしょ。私はあなたに会うためにここまで来たって」

 狼は黙って少女を見つめた。

「あなたに肉体をあげるわ。もう私には必要ないのよ。今、はっきりとわかったの。私はあなたにこの肉体をあげるためにここまできたのよ」

「会いたいものに会えなくていいのか?」

「愛したいと思っていればまた会えるわ」

狼は少女の喉に噛みついた。窒息させると、少女を見つめながら呟いた。

「私も、君のことを愛したいと願うよ。また会えるように」

狼が少女をたらふく食べた後、一筋の光が狼を照らした。霧が晴れ、少女の目指していた光の国が姿を現す。

 狼はしばらくその景色を見つめた後、踵を返し再び歩き出した。


『光と霧の狭間で』

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