manbou

Open App

クリスマスツリーを出した日、ふと窓を見ると一面に霜が広がっていた。指でチョンッと窓を触るとそこだけ向こう側が見える。指でmerry Xmasと書いた。

「まだだけど…」

Merry Xmasの字が赤く染まった。

「ん?」

見上げると霜の向こう側にぼんやりと大きな人影。コンコンとノックされる。

「………」

 黙っていると、今度はMerry Xmasの字から人の目が覗いてきた。

 びっくりして後ずさった。

「Merry Xmas」

 聞こえなかったが、確かにドアの向こうでそう言っている。

 ゆっくりと、本当にゆっくりとドアの鍵を開けた。そろそろと窓をひく。

「メリー…クリスマス?」

 そう問いかける。

「Merry Xmas」

 自信満々にそう返される。

「あの、クリスマスはまだ…」

 そう言うと、髭で隠れた口がoh…と呟いた。

 クリスマスツリーを出した日、慌てん坊のサンタクロースがうちに来た。

「トナカイ…乗る?」

 いきなりの日本語で驚いたが、さして不自然でもなかった。

 サンタはトナカイに乗る?と言ったが、実際にはソリに座る。サンタの隣で街を見下ろす。

「どおりで、まだXmasっポくないなと思った」

サンタがそう呟く。

「街はもうクリスマス一色ですけどね」

 11月からXmasになる国、日本。

「当日とはチガウよ」

 チッチっと指を振られる。

「今日はどうして間違ったの?」

「うーん、今年はWhite Xmasが良くて」

「ああ、 Xmas当日に雪が降るんですよね」

「そう、それでそればっか思ってたから、ユキが降って慌てて出てきチャった」

 手を上向きに広げる。一ミリにも満たない白がポツポツと手に降りる。雪とも言えないほどのテンテン。

「もうちょっと…降りて欲しいですね」

サンタクロースがうんうんとうなづく。

「もっと雪が降ると街が真っ白になって、ソリからの景色が絶景なんだよネ」

「あの、一つ疑問なんですけど…」

「ナニ?」

「どうしてうちに?私は大人ですけど。それに夜中でもないし…なんなら朝だし…」

「早くプレゼント渡したくて…でも今日はどの家も霜で中が見えなくて、そこでMerry Xmasの文字を見て、この家から入ってみようと思ったんだ」

「なるほど……サンタは今日がはじめて?」

「ワリとマエから」

「ですよね」

 家の前まで下ろしてもらったとき、プレゼントをもらった。

「スノードーム…」

「アリガチだよね」

「いえ、クリスマス同日もこのスノードームみたいに雪が降るといいですね」

スノードームを降ると真っ白になる。少しすると真っ赤なサンタが見えはじめる。

「White Xmasになるよう、お祈りしときます」

「アリガト」

 サンタを見送る。サンタがソリに乗ったとき、ふと…サンタがこう言った。

「今日はfrost Xmasだね」

「え?…あ、はい」

「Merry Xmas」

サンタが手を振る。手を振り返した。

「メリー…クリスマス」

サンタが帰る。家に入り、スマホでfrostと検索する。英語は苦手だ…いや、全くできない」

「ああ、霜か…確かに。今日はfrost Xmasだ」

 クリスマスツリーの飾りをつけていく。てっぺんの星をつけたとき

「いや、だから今日は Xmasじゃないんだって…」

そう1人で突っ込んだあと、窓に描いたMerry Xmasの文字から外を覗き込む。まだ…雪は降っていない。

 そのとき、もう会えないであろうあわてんぼうサンタのことをとても恋しく思った。


『霜降る朝』

11/28/2025, 2:58:24 PM