明日、もし晴れたら
一歩、踏み出す
その勇気をください
わたしの心の中は
まだ 晴れ間が見えません
街の灯り
人工的な光の集まりなのに
見ると ホッとする
今日も ようやく終えることが出来た
仕事モードの自分から 解き放たれる
飲み屋の色とりどりの看板や提灯明かりに惹かれて
人恋しさに 暖簾をくぐる
まるで 蛍の光を 追いかけるような
賑やかな談笑 大将の威勢の良い声
そこだけの出会い 美味しいお酒に酒のあて
街の灯りは 今日も甘美で刺激的
リセットさせてくれる
そんな魅惑の明かりに思えた
赤い糸
「好きな人が出来たから別れてほしい」
2ヶ月付き合って、3週間ぶりのデートの別れ際に突然、
彼から告げられて、私の恋は呆気なく終わってしまった。
今年はこれで3人目。
はじめての彼氏は同じ剣道部の元気いっぱいの後輩だった。
終わり際に皆の前で告白され、その場の雰囲気に流された感はあったが、割と気が合うカワイイ後輩だったので承諾した。
しかし、1週間もたたないうちにクラブの終わり際に体育館で土下座され、一方的に別れを懇願された。
(のちに私には黒い噂が立った。)
あれから、剣道部を辞め、陸上部で何かから逃れるように一心不乱に短距離走に身を捧げているらしい。
2人目の彼氏は、通っている塾の1個上の他校の先輩だった。
グイグイと来る軽そうな人だったが、話題は豊富だったので、コレも経験と承諾した。
1ヶ月後、「探さないでください。」とLINEに残し塾からも完全に姿を消した。LINEもあのあと即ブロックされていた。
(塾では怪談話のひとつに加わったとか、加わるまでいかなかったとか……)
そして、新たに加わった3人目が同じ体育委員をしている同学年。
少し大人びていて、とにかく真面目な爽やか。落ち着いた雰囲気を持つ彼となら、今度こそ、いい感じの付き合いになるのではと密かに期待していたのだが、どうやら二股をかけられていたらしい。
恋人である私の反応が好みでなかったのか、庇護欲掻き立てられる彼女の方へ舵を切ったようだ。
あれ以来、何故か向こうから距離を取られている。
(一体、何故?!)
「ねえ、また振られ記録、更新しちゃったんだけどー!」
最近、私と繋がる糸ってブツブツ切れまくっててさ、
この人生にありそうに思えないんだよね。
何処かに落としてきたっぽい。
ねえ、聞いてる?
「聞いてはいるが、食べないと溶け始めているぞ」
ラムネ入りのソーダーバーを食べている幼馴染の指摘で、漸く溶け始めているミントチョコのアイスキャンディーに気づいて、急いで雑に舐めて蟻のご褒美化を回避した。
「今回は珍しく続いてなかったか?」
「振り返ってみれば、主に委員会絡み中心で、こないだのデートが初めて二人きりのだったんだけど、あっちの方は毎週土日、私の知らぬところでエンジョイしてたらしい。」
「向こうが本命だったと?」
「私は2番手だったみたい。」
食べきったアイスの棒を袋の上に置いて、
大きなため息をつき、テーブル上で手を伸ばす。
「……にしては、全く悲しそうじゃないな」
次の獲物であるポテチを開けようとする私の両手を凝視しながら幼馴染は呟いた。
甘いものの次は塩っぱいものと相場が決まっているでしょ?
「いや、ショックはショックだったよ?」
他にも女が居たんかーい!って。
でも、私の食欲までには影響を与えなかっただけで。
なんなら、毎日快眠もしている。
「赤い糸ってあるのかな?あの3人の中には、一人もそれに近い糸は無かったのかな?」
「縁が無かったから、すぐに切れたんだろう。」
はっきりと縁が無かったと言われると、少し口をへの字にしてしまう。どれも、これからだと思っていたから。
反論の言葉を発しようとしたら、幼馴染は私の口に手に取った1枚のポテチを放り込んだ。
「未練でもあるのか?」
幼馴染のワントーン低い声が耳元に届く。
口の中はポテチが占拠しているため首を横に振った。
「なら、問題ないな。ほら、」
思い返してみても未練が出来るほど、誰とも居られなかった。
赤い糸に目印くらい、あればいいのに。
幼馴染はいつもの笑顔を私に向けて、私の口元を指で拭った。
「……絡まる前に断ち切らねばな。
視えないからこそ、厄介な糸だ」
日常
幼馴染へLINEを送り返す、
これが私の就寝前の締め括りだ。
「明日の提出課題はあったか?」だの、
「英語Aのテスト範囲は教科書ではどこまでだ?」
毎回、いい加減クラスの誰かに聞くなり、メモれよと思う。
でも、私がLINEでそれに丁寧に返答しても、
いつも「既読」しか表示されない。
聞いておいての、この塩対応。
返信してこないのは何故かと、一度問いただしたけれど
なんの変化もなかった。
彼女でも居るのたろうかとも思ったが、そんな素振りはないらしい。
あったら、すぐに噂は広まる。
一体、なんなの?
こっちも思い切って、既読だけの反応にしてみようか。
でも、私にはそれを選択する強い心は持ち合わせていなかった。
もう、高校生になったとたん、LINEでしか繋がりがないのだ。
表面上では幼馴染。
中学までは、校内でも放課後でも行き来して、あんなに話していたのに。
高校では一切しなくなった。
お互い、所属するカテゴリーとフィールドが違い過ぎた。
あっちはクラブに熱中して周りに囲まれ青春謳歌している。
こっちは帰宅部で塾通いを強いられているモブに過ぎない。
いつから、道がかけ離れたのだろう。
LINE上でいいように使われてる自覚はある。
返信しているのに、既読で済まされるのが慣れたけれど、
ここ最近じゃあ最後は画面が歪んでしまう。
それでもあんなLINEでも送られると、
まだ完全に忘れられていないと、どこかで安心する私がいる
のも、また、事実。
「……なんか、生存確認されてる気分」
無性に虚しくなった。
これから先も同じように繰り返して、埋もれて身動き取れないままの状態でLINE上で繋がったままでいるのか。
大学生になってからも?
これ以上は上手く振る舞えない。
今夜の返信は、少し短めにした。
お疲れ様!
宿題提出は明日はないよ!
まー、あっても◯◯なら何とかなるでしょ!
今から手を付けないと。レッスン5から7だよ。
そして、私はそっとブロックを押して眠りについた。
#日常 (日常には常に分岐点)
朝日の温もり
ひんやりとした空気に混じって
明けの明星が煌めき
空はだんだんと白みを帯びて
太陽がゆらゆらと光を放ちながら
山々の間から昇ってゆく
朝露がきらりと輝き
小鳥が囀り
ガラス越しに私の顔を照らした
頬に太陽の温もりをじわじわと感じ取る
今日という日が始まる
たとえ、どんなに辛い朝を迎えようとも
雲に覆われずに現れたときの太陽のまばゆい光は
なんだか あの人に頭を撫でられた時を
思い出させる
そして
わたしを鼓舞するのだ