心の灯火
ただ何となしに生きる毎日 色褪せて見える目の前の視界
いつの間にか忘れ去られたもの
窮地に立たされても存在すら気にもとめなかったのに
誰かの力強い心の灯火 張り裂けそうな心の灯火を
垣間見た時
薄っすらと揺らぐ小さな自分の灯火が僅かに共鳴した
まだ 完全には諦めなくてもいい
いまからでも自由に追い求めていいんだ
雁字搦めの翼をひろげて
灯火という暖かい火に照らされて
何処だっていい 行きたいところへ 飛んで行け
辛かったら 疲れたら 羽休めをしたらいい
たとえ頼りない灯火になったとても
心の灯火は 完全には消えやしない
現状が苦しくても 諦めるな
自分から消しに行くな
まだ 話したいことがあるだろう?
心の健康
現時点で、私の心の健康に一番ストレスを与えているのは、
「子どもの夏休みの宿題」の進捗と完成度。
時間ないのに、何故か自由研究に凝る。
主要教科に振り向け!
首を長くして待ってるぞ。
完了したら、私の心の健康は一気に返り咲く!
明日、もし晴れたら
一歩、踏み出す
その勇気をください
わたしの心の中は
まだ 晴れ間が見えません
街の灯り
人工的な光の集まりなのに
見ると ホッとする
今日も ようやく終えることが出来た
仕事モードの自分から 解き放たれる
飲み屋の色とりどりの看板や提灯明かりに惹かれて
人恋しさに 暖簾をくぐる
まるで 蛍の光を 追いかけるような
賑やかな談笑 大将の威勢の良い声
そこだけの出会い 美味しいお酒に酒のあて
街の灯りは 今日も甘美で刺激的
リセットさせてくれる
そんな魅惑の明かりに思えた
赤い糸
「好きな人が出来たから別れてほしい」
2ヶ月付き合って、3週間ぶりのデートの別れ際に突然、
彼から告げられて、私の恋は呆気なく終わってしまった。
今年はこれで3人目。
はじめての彼氏は同じ剣道部の元気いっぱいの後輩だった。
終わり際に皆の前で告白され、その場の雰囲気に流された感はあったが、割と気が合うカワイイ後輩だったので承諾した。
しかし、1週間もたたないうちにクラブの終わり際に体育館で土下座され、一方的に別れを懇願された。
(のちに私には黒い噂が立った。)
あれから、剣道部を辞め、陸上部で何かから逃れるように一心不乱に短距離走に身を捧げているらしい。
2人目の彼氏は、通っている塾の1個上の他校の先輩だった。
グイグイと来る軽そうな人だったが、話題は豊富だったので、コレも経験と承諾した。
1ヶ月後、「探さないでください。」とLINEに残し塾からも完全に姿を消した。LINEもあのあと即ブロックされていた。
(塾では怪談話のひとつに加わったとか、加わるまでいかなかったとか……)
そして、新たに加わった3人目が同じ体育委員をしている同学年。
少し大人びていて、とにかく真面目な爽やか。落ち着いた雰囲気を持つ彼となら、今度こそ、いい感じの付き合いになるのではと密かに期待していたのだが、どうやら二股をかけられていたらしい。
恋人である私の反応が好みでなかったのか、庇護欲掻き立てられる彼女の方へ舵を切ったようだ。
あれ以来、何故か向こうから距離を取られている。
(一体、何故?!)
「ねえ、また振られ記録、更新しちゃったんだけどー!」
最近、私と繋がる糸ってブツブツ切れまくっててさ、
この人生にありそうに思えないんだよね。
何処かに落としてきたっぽい。
ねえ、聞いてる?
「聞いてはいるが、食べないと溶け始めているぞ」
ラムネ入りのソーダーバーを食べている幼馴染の指摘で、漸く溶け始めているミントチョコのアイスキャンディーに気づいて、急いで雑に舐めて蟻のご褒美化を回避した。
「今回は珍しく続いてなかったか?」
「振り返ってみれば、主に委員会絡み中心で、こないだのデートが初めて二人きりのだったんだけど、あっちの方は毎週土日、私の知らぬところでエンジョイしてたらしい。」
「向こうが本命だったと?」
「私は2番手だったみたい。」
食べきったアイスの棒を袋の上に置いて、
大きなため息をつき、テーブル上で手を伸ばす。
「……にしては、全く悲しそうじゃないな」
次の獲物であるポテチを開けようとする私の両手を凝視しながら幼馴染は呟いた。
甘いものの次は塩っぱいものと相場が決まっているでしょ?
「いや、ショックはショックだったよ?」
他にも女が居たんかーい!って。
でも、私の食欲までには影響を与えなかっただけで。
なんなら、毎日快眠もしている。
「赤い糸ってあるのかな?あの3人の中には、一人もそれに近い糸は無かったのかな?」
「縁が無かったから、すぐに切れたんだろう。」
はっきりと縁が無かったと言われると、少し口をへの字にしてしまう。どれも、これからだと思っていたから。
反論の言葉を発しようとしたら、幼馴染は私の口に手に取った1枚のポテチを放り込んだ。
「未練でもあるのか?」
幼馴染のワントーン低い声が耳元に届く。
口の中はポテチが占拠しているため首を横に振った。
「なら、問題ないな。ほら、」
思い返してみても未練が出来るほど、誰とも居られなかった。
赤い糸に目印くらい、あればいいのに。
幼馴染はいつもの笑顔を私に向けて、私の口元を指で拭った。
「……絡まる前に断ち切らねばな。
視えないからこそ、厄介な糸だ」