かなで

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6/7/2024, 11:43:39 AM

世界の終わりに君と 




夢見た将来  

叶わない未来  
    
 
ソファに座っていたテレビを付けた 


ポン……とされたら、こちらもポンと返すと、 

またポンと反応した  
  
  
テレビの画面が変わり、ニュースキャスターが静かに予定時刻を告げる 

 
今夜は、世界の終わりらしい    

……本当に?  

この眼の前の現実世界が一瞬で消えるの 


もう、これ以上失うものは無いと思って 

蹲っていた時 

なにかの縁なのか  

まだ あの絡まった鎖に繋がれていたのか  


私のお腹には君という新しい生命が宿っていた 



 
心のなかで描いてた あの人と将来は家庭を築きたいと

そして あの人と この生涯を全うしたかった 


あの人は もう 私の道とはかけ離れてしまった
 
 
現在(いま) この時空(とき)で 


最後まで 守り 寄り添い合える  

まだ見ぬ我が子がいることは 

なんと 心強いことだろう 


叶うのなら この子を産んで この手で抱っこしたい 

叶うのなら この子の成長を見届けたい   

叶うのなら 君と生きていきたい

 


残酷にも 時は進む 

 


最期の時まで  

 
元気にお腹を蹴る君と遊んでいよう 


この胎動を噛み締めながら








 
  

6/6/2024, 3:17:49 AM

誰にも言えない秘密  



私には誰にも言えない秘密が望んでいないのに増える  


 
「わたし、◯◯くんが好きなの……これ、絶対に秘密ね!」 

 
また、待ったをかける前に増えてしまった

 
「誰にも言えない(言っちゃあいけない)秘密」が

 

私は言いやすいタイプのようだ
  

最後まで聞いてくれて、口が硬いと 





こちらは、減らぬノルマを積み上げられたかのように少々、心苦しい

本音をいうと 


 
日頃、言えぬ秘めた想いを聞く分には、全く問題はないのだ 



……ただ、相手の想いだけでいいの、固有名詞要らない
  
 
匿名希望でお願いしたい



徐々にその秘密は私の中で順調に増えていっている 

今じゃ、このクラスの女子の簡易的な「相関図」が頭で浮かび上がるほどだ

  




私の誰にも言えない秘密は、

聞いてしまった、誰かの言えない秘密を 


全消しに、したいこと

 














6/4/2024, 1:10:58 PM

狭い部屋 
 


私は昔から、こじんまりとした狭い空間というか狭い部屋が好きだ

秘密基地みたいで静かで落ち着くから 

ひとりで居るのは寂しくないの?と周りは尋ねるけれど 

ただ、ひとりで居られる時間も 私にとっては宝物  

自分らしく居られるから

誰にも 邪魔されない 

誰にも 迷惑かけない

そんな、テリトリー  

 

だけど 



その秘密基地が最近 さらに手狭になった
 

四方八方から ざわざわと流れ込んでくる   

聴きたい音 塞ぎたくなる音 

互いに混じり合って   

私の動きもぎこちない


侵入者が いつの間にか 入り込んでた

誰にも 教えていないのに 


 
いつの間に カギが開いたのだろう

いつからそこに存在していたのだろう


もう、日夜 私は溺れている

誰にも 止められない 私自身も

じきにここは埋め尽くされて 

 一気に溢れ出てしまう


 


私の心(狭い部屋)から あなたへの想いが



5/30/2024, 2:33:35 PM

終わりなき旅 


今の人生で 終わりなき旅は御免だ 


魂魄レベルでなら、どの時代に生まれ変わろうが 

それなりに楽しめるのではないだろうか

 
 一区切りずつの人生の記憶は、その都度リセット 
  
それがまた生を受けた場所で姿を変え、数珠繫ぎで紡いでいく 


そんな、「終わりなき旅」なら、 
 


気が楽だ 




前世の記憶がないから、 

それに雁字搦めになることも、惑わされることもないだろう

 


前の続きだと、自覚して生きてないだろうから  



 
 

5/29/2024, 11:39:36 AM

「ごめんね」 
 

 ▷「わたしも同じ気持ちだったの」
 ▶「ごめんね 気持ちは嬉しいけれど」
 
 
「ごめんね、っと……はぁ」
 
ときめき仕様の告白の画面が 
 
また同じ選択肢を選んでタップする
 
主人公の後ろ姿のイラストにグレーがかかって、哀愁を立た酔わせて、その後の進路を簡潔に表示させていた
 
 
脱力感が半端ない


……これで、何回目だろう 




どんなに頑張っても、セーブからやり直しても、

私のもとへ来るのは、何故か「目当てじゃないキャラ」 


また、メインキャラのひとりが来たー  

いや、メインキャラもいいんですよ!王道だし! 
でも、ピンとこなかったのよー、やっぱり、自分の好みがはっきりしちゃってるから、妥協出来ず、すまん!


私が狙ってるのは、隠しキャラの「◯◯先生」なんだよ  


剣道部顧問で熱血漢で声が大きくて大食漢で、 

これが惹かれずにいられますかっていう! 

ここまで来るのに、一度赤点を取りまくって、補講を受けるイベントを発生させて、あとはめっちゃ周りのメインキャラたちと波風を立てず、平等に扱い、爆弾処理に業務デートをし、ときめくイベントの発生を選択肢で防ぎ、数々の四季折々の青春を犠牲にして、地味に地味に「勉強」一色で必死でレベル上げして、イベントの最後に先生が出てくるように努力してきたのー!!


なんて、けなげなの 



なのに、なんで勝手に好感度上げてコッチ来ちゃうかな?!  

だぁー!また、やり直し!!  

私の貴重な時間を返せw
  
縁側でゴロンと庭に面して体勢を傾けると、

「何か、重要なイベントを見落としたんじゃないか?」  


さっきまで庭で剣道の素振りをしていた幼馴染が振り返って、塀から顔を覗かせて声を投げてきた 


「えぇー! 最後の文化祭では主役を演じたし、クリスマスイベも好感度低めキャラとプレゼント交換したよ?正月だって、別のキャラと……」 
 
思い返してはブツブツと答えると、

「発生させないといけないイベントは発生させたのか?」
  
 幼馴染は、いつもどおりに塀をひょいと乗り越えて庭に立っていた

「えー、うーん?多分……」 

「きっと、揃っていない筈だ。だから、狙っていたルートに入らず、他のヤツが来るんだろう」 


私は見慣れたエンドロールの画面を睨みながら溜息をついてゲーム機から手を離した 

「あー、もー!ゲームの世界でも恋って簡単じゃないのね……向いてないわ、私。」 
 
起き上がって三角座りになった
 

「いいのか?ここで諦めて……先生キャラが目当てだったんだろう?」 

「え……まぁ、そうだけど」  

ここで諦めたらアルバムが埋まらないけれど
  

「どういうところが良いんだ?言ってみろ」 


じっーと、幼馴染に顔を覗き込まれる 
 
なんか、圧感じるの、気の所為?
  
「え……ね、熱血漢で元気、なとこ?」
 

へんに緊張するじゃん、何、この空気!!  
顔に熱が集まっている気がしてきた
 
告白してるみたいじゃん!
  
 
「……ほぅ」
  

まさか、アンタにちょっと性格が似てるから必死でゲームで狙ってたというのは、いくらなんでもバレてない、よね? 
 

恥ずかしさから真下に顔を向けて真っ赤な顔を隠れてたら、途端に影が覆いかぶさってきた


顔を上げると、  

いつの間にか、真正面に拳ひとつ分まで距離を縮められ、
 

   

 

「落としてみろ」  




 


 
ごめんね、

     

先に落ちたのはこっちです 


 
 

 
「参りましたっ!!」

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