「ごめんね」
▷「わたしも同じ気持ちだったの」
▶「ごめんね 気持ちは嬉しいけれど」
「ごめんね、っと……はぁ」
ときめき仕様の告白の画面が
また同じ選択肢を選んでタップする
主人公の後ろ姿のイラストにグレーがかかって、哀愁を立た酔わせて、その後の進路を簡潔に表示させていた
脱力感が半端ない
……これで、何回目だろう
どんなに頑張っても、セーブからやり直しても、
私のもとへ来るのは、何故か「目当てじゃないキャラ」
また、メインキャラのひとりが来たー
いや、メインキャラもいいんですよ!王道だし!
でも、ピンとこなかったのよー、やっぱり、自分の好みがはっきりしちゃってるから、妥協出来ず、すまん!
私が狙ってるのは、隠しキャラの「◯◯先生」なんだよ
剣道部顧問で熱血漢で声が大きくて大食漢で、
これが惹かれずにいられますかっていう!
ここまで来るのに、一度赤点を取りまくって、補講を受けるイベントを発生させて、あとはめっちゃ周りのメインキャラたちと波風を立てず、平等に扱い、爆弾処理に業務デートをし、ときめくイベントの発生を選択肢で防ぎ、数々の四季折々の青春を犠牲にして、地味に地味に「勉強」一色で必死でレベル上げして、イベントの最後に先生が出てくるように努力してきたのー!!
なんて、けなげなの
なのに、なんで勝手に好感度上げてコッチ来ちゃうかな?!
だぁー!また、やり直し!!
私の貴重な時間を返せw
縁側でゴロンと庭に面して体勢を傾けると、
「何か、重要なイベントを見落としたんじゃないか?」
さっきまで庭で剣道の素振りをしていた幼馴染が振り返って、塀から顔を覗かせて声を投げてきた
「えぇー! 最後の文化祭では主役を演じたし、クリスマスイベも好感度低めキャラとプレゼント交換したよ?正月だって、別のキャラと……」
思い返してはブツブツと答えると、
「発生させないといけないイベントは発生させたのか?」
幼馴染は、いつもどおりに塀をひょいと乗り越えて庭に立っていた
「えー、うーん?多分……」
「きっと、揃っていない筈だ。だから、狙っていたルートに入らず、他のヤツが来るんだろう」
私は見慣れたエンドロールの画面を睨みながら溜息をついてゲーム機から手を離した
「あー、もー!ゲームの世界でも恋って簡単じゃないのね……向いてないわ、私。」
起き上がって三角座りになった
「いいのか?ここで諦めて……先生キャラが目当てだったんだろう?」
「え……まぁ、そうだけど」
ここで諦めたらアルバムが埋まらないけれど
「どういうところが良いんだ?言ってみろ」
じっーと、幼馴染に顔を覗き込まれる
なんか、圧感じるの、気の所為?
「え……ね、熱血漢で元気、なとこ?」
へんに緊張するじゃん、何、この空気!!
顔に熱が集まっている気がしてきた
告白してるみたいじゃん!
「……ほぅ」
まさか、アンタにちょっと性格が似てるから必死でゲームで狙ってたというのは、いくらなんでもバレてない、よね?
恥ずかしさから真下に顔を向けて真っ赤な顔を隠れてたら、途端に影が覆いかぶさってきた
顔を上げると、
いつの間にか、真正面に拳ひとつ分まで距離を縮められ、
「落としてみろ」
ごめんね、
先に落ちたのはこっちです
「参りましたっ!!」
5/29/2024, 11:39:36 AM