終点
それは、いつ何処でどんな状態で訪れるか誰にも分からない。
そのとき、孤独なのか、見守ってくれる人が居るのか分からない。
ただ、ひとつ分かっている確かな事実は、
この地上で生きている全ての人間ひとりひとりに必ず用意されている、それ。
この世に生を受けてから、自分を乗せた列車は静かに走り出す。
そのルートは、誰ひとり全く同じ道は走らない。
最終の目的地は、みな同じ終着駅。
その終着駅にたどり着くまでに、たったひとつでも自分の納得のいく希望や夢を叶えられたら、本望だと思う。
「悔いがない人生を」
私はこの言葉が苦手だ。
考えたら、考えた分だけ「悔い」が増える呪文のように聞こえるからだ。
今さら過去を悔やんでも、引き返せない。
その時その時に、当時の自分が考え抜いたルートを無かったことには出来ないのだ。
今も、刻々と終点へ繋がる道を止まることなく進んでいる。
でも、人は、終点に向かうために生きているのではない。
自分のために今日という今日を、生きるために生きている。
誰かに、「また、明日」と言うために。
そして、明日を見たいために。
上手くいかなくたっていい
全勝じゃなくても
たとえ、望んだ結果に届かなかったとしても
そこまで走り抜いた自分自身を誇らしく思え。
誰も君の合否を笑ったりなんかしない。
望んだコースの合格、特待が取れなかったとしても、
目指したトロフィーに手が届かなかったとしても決して笑わない。
君はゲームや本の誘惑に負ける事もあったし、宿題に手をつけないこともあった。
あの怠け者だった君が途中で辞めることなく、塾で3年間頑張って、最後の最後まで君なりにあのクラスに喰らいついて、粘って闘い抜いた結果だから。
また、もう一度挑戦できる入試なら最後まで諦めるな。
だけど、二度と受けられない入試ならば、悔しいだろうが結果を受け止めて、心を切り替えて、闘った中で勝ち取った道へ胸を張って進め。
これまでの努力や経験は次の段階への土台になる。
決してこの経験は無駄ではない。
意味がなかった、なんて人生には1つたりともないんだよ。
#中学受験
最初から決まってた
さいしょからって何?
意味もなく選択したわけじゃない。
始まらないと何も見えてこない。
失くして後悔したものもある。
幻想に浸っていたと言えば嘘になる。
羅針盤の針はまだ定まっていない。
レールの先はまだ誰も知る由もない。
立ち止まっている場合ではない。
賽は投げられた。
ここからが、はじまり。
目が覚めるまでに
まだ、ここで声を聴いていたい。
このまま貴方と砂利道を歩いていたい。
こんなにも手の温もりも実感しているのに。
貴方が帰ってくるまで、ご飯を作って、お風呂の準備をして待っていたかったのに。
私の思いとは裏腹に微睡んでいく。
目が覚めたら、見慣れた天井とシーリングライトが目いっぱいに広がって、雀の鳴き声か何かが微かに聴こえる。
一呼吸したら、片方の眼から涙が一筋流れた。
何故か起きてはいけなかったような、焦燥感に襲われる。
願わずにはいられない。
もう一度あの世界へいざなって。
当時を思い返して書き連ねてみた。
病室
そこは、入院治療を必要とする人の生活の空間。
時に喜怒哀楽の感情が交差する。
時として、正論も残酷な刃となりうる。
尊厳とは。
人権とは。
多くは、みな人生の先輩方が大半だ。
中には、若い人もいる。幼い子もいる。
介助や処置や検査、検温をしながら、言葉を交わす。
「もう、帰るの?お疲れさま。また、明日ね。」
病室
そこは、感情が飛び交う戦場。
スタッフもひとりの人間。
時に悩み、怒り、傷つき、励まし合い、歩み寄り、寄り添う、そんな学びの場。
ベビーの産声がフロアの廊下に響き渡った。
私は、血ガスを片手に急ぎ足で分娩室を出ると、
ちょうどエレベーターを待っていた御遺族の娘さんがこちらに気づき、
「…赤ちゃんの声を聴きながら旅立ったから、母は寂しくはなかったはず。最期まで賑やかよね。」とふわりと泣き笑いしてゆっくりと頭を下げて降りて行った。
私は、同意を表す頷きと大きく頭を下げることしか出来なかった。
瞬く間に涙目になっているのに気づく。
「また今度、今のを編み終えたら見てちょうだいね。」
脳裏に昨日の姿が鮮明に蘇ったから。
上手く言葉はかけられなかった。
悔しかった。
情けなかった。
どんな顔を見せてしまっただろうか。
本心では、しっかりと最期まで見送りたかった。
出来ることなら、もう少し、言葉を交わしたかった。
私は階段を一気に駆け下りた。
階段を駆け下りるまでに、気持ちを切り替えなくては、と。
病室
そこは、命の尊さに触れる場所。
私は、一生この感情を忘れたくはない。