「──ごめん」
大好きだった
ホントに……大好きだった
大好きすぎて上手くいかなかった
「──好きです」
告白したのも貴方でした
私をフったのも貴方でした
好きのバランスは安定していたはずなのに
「──どうして?」
一緒にいる時間が長くなるにつれて
当たり前という束縛
安心感という見えない手錠
慣れという鳥かご
それらに二人、囚われていたのかもね
「──いつから?」
彼は私の隣を離れ
彼は私から親友を奪った
彼は私を“好き”と言いながら
“サヨナラ”と言った
──好きになりすぎたから
そう言われた時、私にも心当たりがあった
涙が零れて
頬を床を……服を……拭う手を濡らす
好きの数だけ流れる涙
思い出をカラフルのまま
流していく
貴方を思い、流した涙の数だけ
気持ちは冷めて
ゼロの自分に戻る──
そう信じて
私は涙を……堪えず
頬を濡らし続ける──
(2023.06.03/失恋)
僕はウソツキだ
傷つくのが怖くて
ウソをついて逃げている──
ウソの剣を振るい
ウソの盾で自身を守る
そんな情けない
出来損ないだ
そんな僕だけど
友達は多い方
いや、友達ではないかもしれない
ウソで固められた
人間関係かもしれない
ウソは何もかもをウソで染める
初めは他愛ない“ウソ”だった
一つのウソが
積み重なって
ウソで埋め尽くされて
“真実”が埋もれていった
──ずっと、そう思っていた
なのに──
「気付いていたよ、ウソだって」
誰かがそう呟いた。
途端に皆が口にする。
「俺も気付いてた」
「私も」
「僕も」
“だって、顔は正直な反応してたから”
特に目、だって。
僕、ウソをついている時……
目を逸らしたり、俯いたりしてたって。
この日から僕は
ウソツキから
ばか正直者(いい意味で)と言われるようになった──
(2023.06.02/正直)
今日は雨
昨日も雨
明日も雨
雨、雨、雨……
飴ならいいのに──
傘にポタポタ
肩に足元にポタポタ
……ダメだわ、ベタベタになるじゃない……
小雨はそうめん
大粒はうどん
……だったら、いいのに
下に氷の入っためんつゆ構えて
キャッチして
流しそうめんならぬ
降りそうめん
──ダメだわ
太るし、食欲が追いつかない!
雨ばかりで憂鬱にならないように
こんな風に気分転換して……ね?
(2023.06.01/梅雨)
もうすぐ梅雨だね
そう話題を振ったのは僕だけど
それは照れ隠し
今日、君をここに呼び出したのは……
大切な話をする為だ
しかし……
大切な話というのは
中々、言い出しにくい
咳払い一つ
空気の流れを変える……
僕は意を決して、口を開く──
「歯にノリが挟まってますよ」
気まずい空気
けれど僕の心は
清々しく晴れている──
(2023.05.31/天気の話しなんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、)
──何も考えられない
振り向くことも出来ない
立ち止まれない
前だけ見つめ
風を切り裂き
空をかけるように
目の前が真っ暗に
荒い呼吸は聞こえない
耳が音を拒否する
足が感覚を失う
それでも、走り続ける……
無我夢中……
五里霧中……
やがて
暗闇の中に光が見えてくる
手を必死に伸ばし
掴み取る──
──長き沈黙、一筋の光……
「…………よし、合格だ!」
(2023.05.30/ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。)